AXを現場に根付かせるAIアシュアランス基盤を、広島発で実装へ
株式会社オンザリンクスとGhostDrift数理研究所が、物流AIの提案を「現場で使える会社判断」に変える技術を共同で特許出願した。
物流AIの提案を、現場で使える判断に変える
AIによる業務変革(AX)が広がるなか、次の課題が見えてきた。「AIの提案を使う」ことと「AIの判断を会社として責任を持って採用できる状態にする」ことは、実務上、同じものとして扱えないという点だ。オンザリンクスとGhostDrift数理研究所は、その課題を解くAIアシュアランス基盤を共同で特許出願した。
物流AIは、どの倉庫を使うか、どのルートで届けるか、といった選択肢を自動で提示できる。しかし実際の現場では、「AIがそう言ったから」だけでは判断を採用できない。何を根拠に、誰が確認して、どう決めたのかを、後から説明できる必要がある。
今回出願したシステムは、AIが出した選択肢に対して「この条件を確認した」「この担当者が承認した」「この記録が残っている」という情報をセットにして、改ざんを検知できる形で保存する。後から「なぜその判断をしたか」を関係者なら誰でも確認できる状態——検証可能なAI——を作るシステムだ。本システムは、「責任情報パケット」という概念の物流領域への実装である。
EU AI Actが2026年から段階的な適用を本格化させるなか、AIの判断に対する説明責任と記録の要求は、物流現場でも避けられない課題になっている。
両社はこの技術を、オンザリンクスの物流AI「YUKAI」に搭載して展開する。実装地については、広島発でAIアシュアランスを実装するという構想のもと、国際規格から評価条件を先に固定し、国内主要10都市圏を同じ基準で比較調査した。その結果としても広島が唯一の候補として残り、恣意性を可能な限り排除した根拠を持って広島を起点に進めることができる。
本取り組みは、両社が2026年4月に発表した戦略的パートナーシップ(※)の最初の具体的な成果である。また、本技術は物流の中長期的な構造転換であるフィジカルインターネット(PI)の実現に必要となる要素技術でもある。PIが目指す「企業・業種の垣根を越えた物流資源の共同利用」は、複数の主体が生成したAI判断を相互に検証・信頼できる仕組みなしには成立しない。今回特許出願したAIアシュアランス基盤は、異なる事業者間でAIの判断根拠を共有・検証可能にする土台として機能し、PIが前提とする「開かれた物流ネットワーク」における責任の所在と説明可能性を担保するものだ。
※ 戦略的パートナーシップ発表:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000169775.html
共同特許の概要:AI提案を記録可能な物流判断パケットへ

■発明の名称
物流判断パケットを用いた物流関連業務の採用状態管理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
■技術が解く問題
倉庫・配送会社のデータをAIにそのまま渡しても、AIは「使ってよい情報かどうか」を判断できない。期限切れの在庫、すでに埋まっている配送枠、例外対応が必要なルート——こうした「使えない情報」が混ざったまま最適化をかけると、AIが出した答えを現場で採用できない。
本システムは、データを整理し、使える部分だけを取り出し、その判断の根拠と担当者の承認をセットにして記録する。AIに渡すのは「会社として採用してよい」と確認済みの情報だけである。
■主な特徴
判断の再現:いつでも「あのとき、なぜその選択肢を採用したか」を同じ手順で確認できる
書き換え不可の記録:判断の記録は暗号技術で保護され、後からの変更・削除を検知できる
外部監査への対応:全ての判断履歴が追記専用の台帳に残り、第三者が検査できる
制度変更への対応:どのルールに基づいて判断したかをバージョンごと記録するため、制度が変わっても過去の判断を確認できる
本設計は、EUが定めるAI法(EU AI Act)が求める記録・追跡の要請や、米国NISTが参照するAIリスク管理の考え方と整合を意識したものである。
なぜ広島発か:10都市圏比較で選定したAIアシュアランス実装地

両社は広島発でAIアシュアランスを実装するという構想を当初から掲げてきた。その判断に恣意性を持ち込まないため、国際規格(ASAM OpenODD・EU AI Act・NIST AI RMF・ISO 42001)から評価条件を先に固定し、国内主要10都市圏を同一の基準で比較調査した。
■調査の結果
・東京・大阪・横浜川崎は都市規模が大きく、最初の実装エリアを絞り込むことが難しい
・名古屋・福岡北九州は主要な物流拠点が複数の自治体にまたがり、責任の整理が複雑になる
・神戸・仙台・新潟は港湾や物流拠点の整備・設計がまだ途中の部分がある
・広島・岡山は物理的な条件をクリア
・AIアシュアランス実証に特化した公的制度が整っているのは広島のみ
調査の結果としても、広島が唯一の候補として残った。この調査プロセスと結論は、定理証明ツール「Lean 4」を使った形式化としてGitHubに公開され、誰でも内容を確認・検証できる。
GitHub:https://github.com/GhostDriftTheory/autonomous-ai-logistics-assurance-testbed
両社代表コメント
「物流AIを本番で使おうとすると、必ず『この判断を会社として採用していいか』という壁にぶつかります。YUKAIで最適化はできても、その判断の根拠を後から説明できる仕組みが足りていなかった。AXを現場に根付かせるには、AIアシュアランスの基盤が必要だとわかってきた理由です。GhostDriftさんとの共同特許は、その壁を正面から解くものです。広島を起点に、現場で本当に使えるAI物流の基盤を作っていきます。」
― 東聖也、オンザリンクス代表
「広島発でAIアシュアランスを実装するという方針のもと、恣意性を排除した調査を行い、その結果としても広島が残りました。この根拠があるからこそ、確信を持って進められます。物流を起点に、AIの判断を社会で安全に使うための共通のしくみを、オンザリンクスさんとともに広島から作っていきます。」
― 前木秀光、GhostDrift数理研究所代表
今後の展開:国際議論の起点「広島」から始まるAIアシュアランスの実装
両社は広島を起点として、物流判断パケットシステムをオンザリンクスの物流AI「YUKAI」に搭載していく。YUKAIが提示する最適な物流の選択肢に対して、「なぜその選択肢を採用したか」を後から説明できる記録を付与し、荷主・物流会社が安心して判断を採用できる体制を整える。
あわせて、広島AIアシュアランス協議会の立ち上げにもつなげていく予定だ。
本取り組みは、日本発の「G7広島AIプロセス」の実装部分を担う取り組みとして位置付ける。TCP/IPがコンピューター同士をつないだように、AIが出した判断を社会で安全に使うための共通のしくみが必要になっていく。両社はこの取り組みを、将来的には「AI時代のTCP/IP」に相当する社会実装プロトコルへ発展させることを目指す。
■関連リンク
GitHub(形式証明):
https://github.com/GhostDriftTheory/autonomous-ai-logistics-assurance-testbed
戦略的パートナーシップ発表:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000169775.html



