ストレスチェック実務ガイド 法的義務の範囲、実務手順5ステップを解説 ノウハウ

ストレスチェックの義務とは?対象者の範囲と実務手順ガイド

ストレスチェック制度とは、労働安全衛生法に基づき、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止や職場環境の改善を目的として実施される取り組みです。現在、常時50人以上の労働者がいる事業場では年1回の実施が義務付けられていますが、50人未満の小規模事業場についても2028年4月より義務化されることが決定しています。
本記事では、法律上の基礎知識や制度の内容だけでなく、具体的な「実務手順」や運用の注意点まで分かりやすく解説します。法令遵守を果たしながら、社内の実務負担を上手にコントロールし、より良い職場環境づくりへとつなげていくための参考にしていただければ幸いです。

【無料ダウンロード】バックオフィス業務の整理や仕分け、効率化に役立つ資料をご用意しています。「事務業務62項目の優先順位付き完全ガイド」をぜひご活用ください。

事務業務62項目の優先順位付き完全ガイド

ストレスチェック制度とは?「3つの法的義務」とメリット

まずは、ストレスチェック制度の基礎知識と、企業が遵守しなければならない法的義務、制度のメリットについて整理します。

企業が対応すべき3つの法的義務

ストレスチェック制度において、企業に課される主な法的義務は以下の3点です。

(1)年1回の実施
常時50人以上の労働者を使用する事業場にストレスチェックの実施義務があり、毎年1回実施することが必要です。ここで重要となるのが「誰が対象者になるのか」という点です。対象者の範囲は、正社員だけでなく以下の要件を満たすパートタイム労働者や契約社員も含まれます。

ストレスチェック企業が対応すべき3つの法的義務

【ストレスチェックの対象となる要件】
次のいずれの要件も満たす従業員が対象となります。 

1.期間の定めのない労働契約により使用される者(1年以上使用されることが見込まれる者を含む) 

2.1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である者(例:契約社員・有期雇用) 

※1週間の労働時間が4分の3未満であっても、通常の労働者の概ね2分の1以上働いている場合は、実施することが望ましいとされています(例:パートタイマー・アルバイト)。 
派遣社員については、派遣元事業場に実施義務が生じます。 
出典:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル

常時50人未満の事業場については、当面の間は「努力義務」とされていますが、2028年4月から義務化されることが決定しているため、小規模な事業場であっても早めの準備が推奨されます。  

(2)高ストレス者への面接指導・配慮 
ストレスチェックの結果、実施者(医師や保健師等)により「高ストレス」と判定され、かつ面接指導が必要と認められた労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を遅滞なく手配しなければなりません。 

さらに、面接指導を行った医師から意見を聴取し、必要に応じて就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮といった「就業上の適切な措置」を講じる義務が課されています。  

(3)労働基準監督署への報告書提出
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、ストレスチェックおよび面接指導の実施状況について、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を作成し、所轄の労働基準監督署長へ提出する義務があります。 
出典:厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告

ストレスチェックを企業が実施するメリット

ストレスチェックは単なる法令順守の義務作業にとどまりません。企業組織の健全化を図るうえでさまざまなメリットが存在します。

  1. 従業員のメンタル不調予防と休職・離職リスクの低減 
    ストレスチェックを通じて従業員自身が自らのストレス状態に気づく「セルフケア」の機会を提供できます。メンタル不調の兆候を早期に発見・対応することで、長期休職や離職のリスク低減につながります。 
  2. 「働きやすい職場環境」の構築(集団分析の活用)
    個人結果を集計・分析した「集団分析(部・課などの単位での分析)」を行うことで、組織内のどこに強いストレス要因(過重労働、人間関係、仕事のコントロール感の低さなど)が存在するかが可視化されます。これにより、客観的なデータに基づいた職場環境改善策を立案・実施できます。  
  3. 安全配慮義務の履行による企業の社会的信頼向上
    従業員の心身の健康に配慮する体制を整えることは、労働契約法に基づく「安全配慮義務」の履行に直結します。コンプライアンス意識の高い企業として、従業員や求職者、取引先からの社会的信頼向上に寄与します。 

▼ストレスチェックの適切な運用や、それに伴う日常業務の負担にお悩みの際は、専門スタッフが実務をサポートする「総務事務代行サービス」のご利用もおすすめです。対応範囲や具体的な導入事例は以下よりご確認いただけます。

ストレスチェック実施に適した時期と注意点

ストレスチェックは、実施時期の選定が測定結果の客観性や実務の円滑さに大きく影響します。  

スムーズな回答が得られるおすすめの実施時期

ストレスチェックの実施時期として適しているとされるのは、以下のタイミングです。  

●6月〜7月頃:新年度(4月)やGW直後の慌ただしさが落ち着き、業務量が比較的安定しやすい時期。  

●9月〜10月頃:夏季休暇が明け、下半期に向けた業務環境が整い、落ち着いて回答しやすい時期。  

スムーズな回答が得られるおすすめの実施時期

これらの時期は、季節的な繁忙や一時的な環境変化の影響を受けにくいため、労働者の普段のストレス状態を正確に測定しやすい環境といえます。  

実施を避けたほうがよい時期

一方で、以下の時期にストレスチェックを実施することは避けるのが賢明です。

  • 決算期・繁忙期
    一時的な業務過多によってストレス反応が高く出やすく、実態と剥離した結果となるリスクがあります。  
  • 人事異動の直後(異動後1〜2ヶ月以内)
    新しい部署や人間関係への不適応により、一時的な精神的負荷がピークに達している可能性が高く、平常通りの測定が困難になります。  
  • 大型連休前後
    連休前後の業務集中や連休明け特有のメンタル低下が影響を及ぼしやすくなります。  

実施時期の調整と併せて、自社の総務業務全体を整理しておくこともスムーズな運用の鍵となります。具体的な業務の整理方法や手順については、こちらの記事をご参照ください。

ストレスチェックの具体的な実務手順 

ストレスチェックの計画から完了まで、現場の総務担当者が辿る具体的なステップと注意点について解説します。

STEP1:導入準備と方針の表明・社内ルールの策定

実施の1〜2カ月前を目安に、社内の運用基盤を整えます
最初に、経営者や事業者が「メンタルヘルス不調の予防」や「プライバシー厳守」「受検や高ストレス判定を理由とした不利益な取扱いの禁止」といった制度運用の基本方針を社内へ明確に発信(方針表明)します。

続いて、労働者側の意見を取り入れる機会を設けます
50人以上の事業場では衛生委員会などの場で協議を行い、50人未満の事業場では朝礼や業務ミーティングなどの場を活用して現場の意見を吸い上げます。これらの内容を取りまとめ、以下の6項目を網羅した「ストレスチェック運用規程(社内ルール)」を作成し、社内イントラネット等連絡ツールや書面で全従業員へ周知します。

  1. 運用体制(実施者や実務担当者の役割分担) 
  2. 実施方法(採用する問診票や高ストレス者の判定基準) 
  3. データの保存(結果記録の保管期間および管理場所) 
  4. 情報保護(データの閲覧権限と守秘義務) 
  5. 情報開示と窓口(本人への情報開示手続および苦情処理窓口) 
  6. 不利益取扱いの禁止(受検辞退や判定結果を理由とする不利益な扱いの防衛策) 
導入準備と方針の表明・社内ルールの策定

STEP2:実施体制の決定と実務担当者の選任   

従業員数50人未満の事業場においては、個人情報の秘匿性を担保する観点から、ストレスチェック実務を外部の専門機関へ委託する運用が推奨されています。委託先の選定時には「サービス内容事前説明書」などを取り寄せ、実施体制・料金体系・セキュリティ対策を事前に精査した上で契約を進めます。
あわせて、社内側の役割を以下のように手配・選任します。   

・実務担当者: 
社内の実施計画の作成や委託先機関との連絡窓口を担う担当者(衛生推進者など)。診断結果等の個人の健康情報に直接触れないため、人事権を持つ役職者が兼務することも可能です。   

・医師による面接指導の連携先手配: 
高ストレス者が発生した際に速やかに面談を案内できるよう、あらかじめ担当医師を確保しておきます。50人未満の事業場では、地域ごとに設置されている「地域産業保健センター(地さんぽ)※1」の無料支援制度を活用することが可能です。  

※1:地域産業保健センターでは、ストレスチェック自体の実施は行っていません。労働者数50人未満の事業場から依頼があった場合に医師による面接指導を無料で実施しています。
https://www.johas.go.jp/Portals/0/sanpocenter/stresscheck.html

※厚生労働省が提供する標準的な質問票の様式や関連資料については、厚生労働省の公式Webサイトで公開されている「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」をご確認ください。
https://stresscheck.mhlw.go.jp/download01.html

STEP3:対象者選定・受検の実施・配慮ある受検推奨 

実施1カ月前には、前述の要件に基づいて該当する対象者をリストアップします。  
また、対象者に対してストレスチェックの実施目的、実施期間、回答方法、プライバシー保護の徹底についてアナウンスを行います。特に「個人の結果が上司や会社に勝手に開示されることはない」という点を徹底して伝えることが、受検率向上や正直な回答につながります。  

対象者選定・受検の実施・配慮ある受検推奨

実施期間中は、Webシステムまたは紙の質問票を用いて調査を実施します。質問票の配付・回収・集計作業は実施者(委託先機関)が主導して行います。実務担当者は未受検者に対して受検のリマインド(受検推奨)を行うことが可能ですが、ストレスチェックの受検自体は労働者の義務ではないため、業務命令として受検を過度に強制・強要することは禁止されています。あくまで受検しやすい環境や時間の配慮を行うことが求められます。  

STEP4:結果通知と面接指導の調整手配

受検終了後、個人ごとの結果は実施者(委託機関)から直接、従業員本人へ通知されます。

【法令上の重要な注意点】 
人事権を持つ総務担当者や役員・上司が、本人の同意なしに個人のストレスチェック結果を閲覧・把握することは法律で禁止されています。個人の結果データの保管に関しても、外部機関や実施者の責任のもとで行うことが基本です。  

高ストレス判定を受けた従業員から「面接指導」の申し出があった場合、実務担当者は事前に提携しておいた医師(または地域産業保健センター)との面談スケジュール調整や、プライバシーに配慮した面談場所の確保を行います。

結果通知と面接指導の調整手配

STEP5:労基署への報告書提出と事後措置 

面接指導を実施した場合は、医師からの意見聴取を行い、必要に応じて勤務時間の短縮や配置転換等の「就業上の措置」を実施します

最後に、所轄の労働基準監督署へ「検査結果等報告書」を提出します。報告書には受検人数や面接指導の実施件数などを正確に記載する必要があります。
データの集計支援や報告書フォーマットの準備は外部機関に依頼できますが、労働基準監督署への書類提出手続自体は、委託業者ではなく自社(事業者)名義で行います。

また、面接指導結果の記録は、労働安全衛生法に基づき5年間保存する義務があります。第三者が勝手に見られないよう、鍵付きのキャビネットやパスワードを設定した安全なサーバーで保管しましょう。
各種人事・労務関連書類の保管義務期間をひと目で確認できる「人事書類の保管期間(一覧)」をご用意しています。こちらも併せてご活用ください。

人事書類の保管期間【一覧】

ストレスチェック運用に伴う総務現場の課題

ストレスチェックの運用において、実務を担当する総務の現場ではさまざまな負担や課題が発生しがちです。

法律遵守やプライバシー配慮に伴う管理工数 

ストレスチェックの運用では、個人情報の取り扱いに厳しい制約が存在します。未受検者への声かけ一つをとっても、受検自体は義務ではないため業務命令のような強要は避け、個別に配慮した連絡を行う必要があります。また、高ストレス者からの面接指導の申し出窓口対応など、プライバシーに細心の注意を払いながら進める調整作業は、担当者の心理的にも大きな負担となります。

記載漏れや集計ミスを防ぐ正確な書類作成

労働基準監督署に提出する報告書の作成にあたっては、事業場ごとの対象人数や受検者数の正確なデータ確認が欠かせません。フォーマットへの不備や集計不一致を防ぐための慎重なデータ照合業務は、細かな確認作業を伴う手間の大きい実務です。

STEP1:導入準備と方針の表明・社内ルールの策定

毎月発生する定常業務との重複による圧迫

総務部門は、毎月の給与計算、勤怠データのチェック、社会保険手続き、入退社対応、備品・施設管理など、多岐にわたる定常業務(ルーティン事務)を常時抱えています。こうした日常業務にストレスチェックの対応が重なることで業務量が一時的に増大し、他の業務スケジュールに影響を及ぼす懸念が生じます。 

【ポイント】現場の業務負担を抑えるための工夫
ストレスチェックに伴う実務の負担を抑える方法として、まず挙げられるのが「繁忙期を避けた実施時期の調整」です。ただし、時期の調整は業務負担の分散にはつながるものの、対応に必要な作業量そのものが減るわけではありません。  
そこで選択肢の一つとなるのが、総務事務代行サービスの活用です。  

ストレスチェックに関わる社内アナウンスの準備や窓口対応のほか、日常的な勤怠チェックやデータ入力といった定常事務の一部を外部へ委託(切り出し)することで、特定の時期に業務が集中しても、総務部門が柔軟に対応できる余裕を作りやすくなります。
総務の定常業務やバックオフィス効率化の具体例については、こちらの資料で詳しくご紹介しています。無料ダウンロードして、どうぞご活用ください。

総務事務代行サービス

【合わせて読みたい】入退社手続きなどの定常業務を効率化するポイント
ストレスチェックの実施時期と同様に、総務の業務を圧迫しやすい「入退社手続き」の効率化ガイドです。バックオフィスの負担軽減へ向けて、ぜひ合わせてご一読ください。

よくある質問(FAQ) 

Q
従業員数50人未満の事業場でも、ストレスチェックは実施すべきですか?
A

現在は「努力義務」とされていますが、2028年4月からの完全義務化に向けて法改正の準備が進められています。直前になって慌てないよう、あらかじめ実施計画の立て方や規程の準備、運用のイメージを掴んでおくことが推奨されます。

Q
派遣社員やパートタイマーもストレスチェックの対象になりますか?
A

派遣社員については「派遣元企業(派遣会社)」に実施義務がありますので、自社で実施する対象者リストからは除外して管理します。  

パートタイマーやアルバイト従業員については、一定の労働条件(契約期間1年以上見込み、週の所定労働時間が通常の4分の3以上)を満たす場合に対象となります。ただし、1週間の労働時間が4分の3未満であっても、通常の労働者の概ね2分の1以上働いている場合は、実施することが望ましいとされています。

Q
ストレスチェックの時期に総務の業務がパンクしないための対策はありますか?
A

実施時期を繁忙期からずらし、業務の集中を避ける調整が基本となります。また、日頃の定常業務(勤怠集計やデータ入力など)の一部を外部へ切り出し、総務のキャパシティに余裕を作っておくのもひとつの工夫です。 

制度の適切な運用と業務改善の両立へ

ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調を未然に防ぎ、健全で働きやすい職場環境を構築するための大切な取り組みです。

しかし、制度を運用すること自体や日々の事務作業に追われ、本来の目的である「結果に基づく職場環境の改善」や「高ストレス者への丁寧なケア」に十分な時間を割けなくなってしまっては、制度を十分に活かしきれません。

適切な制度運用をスムーズに進めるためにも、実施時期の工夫に加え、選択肢の一つとして「総務事務代行(BPO)」などの外部支援を柔軟に活用するのも手です。日頃の手作業やルーティン業務を上手にコントロールし、総務・人事部門が企業成長を支えるコア業務へ集中できる環境を整えていきましょう。 

【総務・人事の業務負担を軽減するために】 
定常業務やバックオフィス実務の効率化・外部委託をご検討中ではありませんか?
専門スタッフが貴社の実務をサポートする BODの「総務事務代行サービス」の詳細は、以下よりご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました