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ヒヤリハットとは?意味や対策を事例を用いてご紹介!

業務を行う中で「BccとCcを間違えて送りそうになった…」「更新するExcelデータの行を間違えたまま上書きしそうになった…」など、ヒヤッとしたり、ハッとしたことはありませんか?このように、事故が起こる寸前で「ヒヤリ」としたり「ハッ」とする事をヒヤリハットと言います。
ヒヤリハットは発見しただけで終わらせていては、重大な事故に繋がる可能性があります。1件でも事故を未然に防ぐために、ヒヤリハットは重要なリスクマネジメントの一つとして捉えなければいけません。
この記事では、ヒヤリハットの意味をわかりやすく解説し、業種別の事例や報告書の書き方、注意点を解説します。

ヒヤリハットとは

ヒヤリハットの概念と定義

  ヒヤリハット危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象のこと

ヒヤリハットとは、人の不注意や判断ミスにより、事故の可能性に繋がる危険な状況や行動を表します。
ヒヤリハットは事前に事故や問題を未然に防ぐための重要な手がかりとなるため、安全管理やリスク管理を行う際に使用することが多い言葉です。

関連用語(インシデント、アクシデント)

インシデント

インシデントとは、事故や障害、エラーや不具合など、予定外の出来事や問題が発生することを指します。 また、インシデントは、ヒヤリハットが実際に起こることで現実の問題となった状態を表現する場合にも使われることがあります。

アクシデント

アクシデントとは、予期しない形で発生し、損害や被害をもたらす事故のことを指します。
アクシデントは、ヒヤリハットやインシデントが適切に対処されず、結果的に起こることが多いとされています。


つまり、ヒヤリハットは事故や問題を未然に防ぐための注意喚起の概念であり、インシデントはヒヤリハットで危惧されるような事故が実際に起こった状態を表現し、アクシデントは予期しない事故や不幸な出来事を指します。
ヒヤリハット、インシデント、アクシデントは、それぞれ安全管理やリスク管理の文脈で使用される用語であり、事故防止や対策の観点から重要な意味を持つ言葉です。

ハインリッヒの法則とヒヤリハットの関係

ハインリッヒの法則とは、アメリカの損保保険会社(トラベラーズ保険)の安全技師であるH.W. ハインリッヒが5,000件以上の事故を調査し、提唱した、労働災害における経験則で、「1:29:300の法則」とも呼ばれています

この法則では、1 件の重大事故の背後には、29 件の軽傷事故、300 件の無傷事故(ヒヤリハット)があると言われており、その300回のヒヤリハットに重大な事故やけがにつながる危険有害要因が数多くあるとされています。つまり、ヒヤリハットを適切に管理し、予防策を講じることで、重大な事故やけがを未然に防ぐことができるという考え方です。

ハインリッヒの法則とヒヤリハットの関係

業種別 ヒヤリハット事例と発生状況

業種別ヒヤリハット事例

製造業

製造業におけるヒヤリハットには、機械操作時の注意不足による事故が挙げられます。機械の運転や調整を行う際に、操作ミスや保護具の不使用によって怪我をするケースがあります。
また、物流や倉庫作業においては、積み下ろし時の重量物の取り扱いにも注意が必要です。重量物の落下や誤った持ち方によるケガが起こる可能性があります。

建設業

建設業では、高所作業に関するヒヤリハットが多いです。足場の不安定さや安全対策の不備により、高所からの転落事故が起こる可能性があります。また、重機や建材の取り扱い時にも事故が発生することもあります。クレーンの操作ミスや負荷の計算ミス、建材の転倒や落下などが原因として考えられます。

運輸業

運輸業では、車両への荷物の積載を行う際に、誤った持ち方や不適切な固定で作業を行うと、荷物が転倒・落下するリスクがあります。
また、積載物の不適切な固定や荷崩れは、車両の安定性を損ねるだけでなく、周囲の車両や歩行者に危険を及ぼす可能性があります。荷物の適切な固定方法や積載物のバランスを確保するために、専用の装備や作業手順を遵守することが重要です。

介護職

介護現場では、高齢者や身体的な制約がある利用者が転倒するリスクが常に存在します。適切な歩行補助具の利用や環境の改善、床の滑り止めの使用など、転倒リスクを最小限に抑える対策が必要です。

オフィス作業

オフィス環境では、コンピューターシステムやネットワークを使用して重要な情報を扱います。しかし、セキュリティの意識が低い場合、情報漏洩など、サイバーセキュリティに関するリスクが発生する可能性があります。パスワードの管理、メールの添付ファイルの注意、不正アクセス対策など、セキュリティに関するガイドラインを徹底し、情報の漏えいを防ぐ対策を講じることが重要です。
また、オフィスでは、パソコンやプリンターなどの電子機器に付随するケーブル類が多く存在します。これらのケーブルが乱雑に敷かれ、足元や通路上に絡まっている状態では、従業員がつまずいたり転倒したりする危険があります。
ケーブルをまとめて束ねたり、ケーブルカバーや床下配線などを活用したりして、ケーブルを見えにくくし、通行の妨げにならないようにしましょう。必要に応じて、床や通路上にケーブルを固定するためのクリップやコードカバーを使用することも効果的です。

業種別 ヒヤリハット事例と発生状況

ヒヤリハット報告書の目的と書き方

報告書の目的と重要性

報告書の目的

  1. ヒヤリハット事象や危険箇所の共有
    ヒヤリハット報告書は、職場内の関係者や上司、安全担当者といった関係者間でヒヤリハット事象や危険箇所の情報を共有するための手段です。報告書を通じて、他の人が同様の事象や危険を回避できるようにすることが目的です。
  2. 問題解決や改善策の提案
    報告書にはヒヤリハット事象や危険箇所の詳細な記述や原因分析を記載します。これにより、問題の解決や改善策の提案に繋げることができます。
報告書の重要性
  1. 事故やトラブルの予防
    ヒヤリハット報告書は、事故やトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。報告されたヒヤリハット事象や危険箇所に対して、適切な対策や予防策を講じることができます。
  2. 安全文化の醸成
    報告書を通じて、職場全体での安全意識や安全文化を醸成することができます。ヒヤリハット報告の促進や報告者の評価・感謝の示し方など、安全への関心や参加意欲を高める効果があります。

報告書の基本フォーマットと項目

ヒヤリハット報告書を作成する際には、5W1H(Who, What, When, Where, Why, How)という手法を活用することが有効です。

Who (誰)ヒヤリハットに関与した人物や目撃者、関係者の情報を記述します。
What (何)ヒヤリハット事象や危険箇所の具体的な説明や詳細を記載します。
When (いつ)ヒヤリハットが発生した日時や時間帯を明記します。
Where (どこ)ヒヤリハットが発生した場所や現場の詳細な位置情報を記述します。
Why (なぜ)ヒヤリハットが発生した原因や背景を分析し、可能な限り具体的に記載します。
How (どのように)ヒヤリハットが起きた経緯や状況、具体的な行動や手順を詳しく説明します。

5W1Hを活用することで、報告書の内容が明確で詳細なものになり、読み手が必要な情報を把握しやすくなります。

<ヒヤリハット報告書の内容例>

・報告者名(目撃者や関係者の情報)
・ヒヤリハットを発見した日時と場所
・ヒヤリハットが発生した業務内容や危険箇所の概要
・ヒヤリハットが発生した状況の詳細
・原因分析と考察
・対策や改善策の実施状況
・追加のコメントや意見

ヒヤリハット報告書の目的と書き方

報告書の書き方のポイント

ヒヤリハット報告書を作成する際には、以下のポイントに注意しながら書き進めることが重要です。

  1. 具体的な事実を記述する
    抽象的な表現や推測に基づく情報ではなく、具体的な事実や観察結果を記述します。客観性を保つために、自身の感情や主観的な意見を排除して記入しましょう。
  2. 写真や図表の活用
    報告書には、事象や箇所を具体的に示すために写真や図表を活用することが効果的です。撮影した写真や図表には、日時や場所の情報も明記します。
  3. 簡潔かつ明確な表現
    報告書は簡潔で明確な表現を心がけましょう。冗長な文や曖昧な表現を避け、客観的にみても理解しやすい文章で記入することが大切です。
  4. 原因分析と改善策の提案
    ヒヤリハットが起きた原因をできる限り詳細に分析し、その結果を報告書に記載します。さらに、問題の解決や改善策の提案を行います

注意点と定着させるための工夫

ヒヤリハット報告書を効果的に活用し、注意点を定着させるためには、以下の工夫が有効です。

  1. レビューとフィードバック
    ヒヤリハット報告書を提出した後に、関係者からのレビューやフィードバックを受けられる体制を整えることが重要です。これにより、報告書の質を向上させるだけでなく、報告者の成長や学習の機会を得ることができます。
  2. 公開と共有
    ヒヤリハット報告書を公開し、職場内で共有することで、他の従業員や関係者にも注意喚起を行うことができます。安全意識を高めるために、報告書を可視化する取り組みを行いましょう。
  3. 定期的な報告書のまとめ
    ヒヤリハット報告書を定期的にまとめて、傾向や共通の課題を把握することが重要です。定期的な報告書のまとめにより、より効果的な対策や予防策の策定が可能になります。
  4. 報告者の評価と感謝
    報告者への評価や感謝の意を示すことも大切です。報告書の提出や積極的な報告を促すために、報告者へのフィードバックや報奨制度を導入することが有効です。

ヒヤリハット報告書は安全意識の向上や問題解決に貢献する重要な文書です。上記のポイントと工夫を活用しながら、効果的な報告書作成を行いましょう。

ヒヤリハット報告書の注意点

ヒヤリハット対策と再発防止

ヒヤリハットの発生を最小限に抑え、再発を防止するためには、以下の対策が有効です。

原因分析

ヒヤリハットが発生した場合、まずはその原因を徹底的に分析することが必要です。原因分析を行うことで、具体的な問題点やリスク要因を特定し、適切な対策を講じる基盤となります。

リスク評価とランキング

ヒヤリハットのリスクを評価し、重要度や優先順位を付けることも重要です。リスクの大きさや発生頻度に応じて、対策の優先度を設定することで、限られたリソースを最も効果的に活用することができます。

職場環境の整備

安全な職場環境の整備もヒヤリハット対策の一環です。具体的な対策の一例をご紹介します。

  1. 作業スペースの整理整頓
    作業場やオフィスの配置や整理を見直し、安全かつ効率的な作業環境を整えます。物品の保管方法や通行路の確保、適切な設備や機器の設置などを検討しましょう。
  2. 安全設備の整備
    火災予防や緊急時の対応に備え、適切な消火器の配置や避難経路の表示などの安全設備を整備します。
  3. 作業環境の改善
    快適な温度・湿度の維持や騒音・振動の低減、照明の適切な設置など、作業環境の改善にも取り組みましょう。

意識改善と教育訓練

ヒヤリハット対策には、従業員の意識改善と適切な教育訓練も欠かせません。

・危険予知訓練(KYT)
危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を、ミーティングを通して情報を共有し合うことで高める手法です。ローマ字のKYTは、危険のK、予知のY、訓練(トレーニング)のTをとったものです。

<危険予知訓練(KYT)の進め方>

ラウンド危険予知訓練の4ラウンド危険予知訓練の進め方
1R どんな危険がひそんでいるかイラストシートの状況の中にひそむ危険を発見し、危険要因とその要因がひきおこす現象を想定して出し合い、チームのみんなで共有する。
2Rこれが危険のポイント発見した危険のうち、これが重要だと思われる危険を把握して○印、さらにみんなの合意でしぼりこみ、◎印とアンダーラインをつけ「危険のポイント」とし、指差し唱和で確認する。
3Rあなたならどうする◎印をつけた危険のポイントを解決するにはどうしたらよいかを考え、具体的な対策案を出し合う。
4R私達はこうする対策の中からみんなの合意でしぼりこみ、※印をつけ「重点実施項目」とし、それを実践するための「チーム行動目標」を設定し、指差し唱和で確認する。

(厚生労働省.“職場のあんぜんサイト:危険予知訓練(KYT)”.2023-06-28.https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo40_1.html).

・社員研修
ヒヤリハットに関する研修を実施し、従業員の危険認識や安全意識を高めることも効果的です。具体的な事例や対策方法の紹介、安全マニュアルの配布などを通じて、従業員の教育を行いましょう。


ヒヤリハット対策と再発防止は、組織全体の取り組みが求められます。従業員と経営陣の協力と連携を図りながら、安全な職場環境を確保し、ヒヤリハットの発生を減らす取り組みを継続していきましょう。

ヒヤリハット対策と再発防止

ヒヤリハットのメリットと問題点

ヒヤリハットのメリット

  • 労働者や職場の安全向上
    ヒヤリハットの報告や分析を通じて、労働者や職場の安全意識が高まります。その意識の高まりにより、事故や災害の発生を予防することができます。労働者の安全と健康を守るために、ヒヤリハットは重要な役割を果たします。
  • 労災の予防
    ヒヤリハットは、労災の予防にもつながります。ヒヤリハットを報告し、その原因を分析することで、危険な状況や作業手順を改善することができます。この対策を講じることにより、労働災害や職業病のリスクを低減することに繋がります。

ヒヤリハットの不都合や懸念事項

ヒヤリハットにはいくつかの不都合や懸念事項も存在します。

  • 報告の不備や不正確な情報
    ヒヤリハット報告の際、報告内容に不備があるなど、正確な情報が提供されていない場合があります。情報が正確ではない報告書が多いと感じる場合は、報告者の知識や意識の問題や報告システムの改善が必要です。
  • 報告への抵抗感
    ヒヤリハットを報告する従業員は、報告することによる風当たりを心配し、ヒヤリハットの報告に抵抗感を抱く場合があります。この場合は、組織文化や上下関係、報告者へのフィードバックに原因がある可能性があります。
  • 報告内容への対応や改善措置不足
    ヒヤリハット報告が行われても、報告内容に対する適切な対応や改善措置が取られない場合があります。これは組織の意識やリソースの問題、関係部署の連携不足などが背景にある可能性があります。

以上がヒヤリハットのメリットと問題点です。ヒヤリハットのメリットを最大限に活かしながら、問題点に対しては適切な対策を講じることが重要です。

ヒヤリハットのメリットと問題点

ヒヤリハットで安全意識向上

ここまで、ヒヤリハットについての意味の解説や事例の紹介、報告書についてご説明してきました。
ヒヤリハットの数が減れば減るほど重大事故が起こるリスクは軽減します。そのため、業務を行う上で気付く違和感や小さな不安は全てヒヤリハットであるととらえ、「すぐに社内で共有する」 体制づくりが重要です。

一つ一つのヒヤリハットはもしかしたら小さなことかもしれませんが、そのヒヤリハットは重大事故に繋がっています。ヒヤリハットを放置したために重大事故が起こり、会社の信頼を失ってしまっては手遅れです。
この機会に従業員の安全意識の向上のための施策として、ヒヤリハットを活用してみてはいかがでしょうか。

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