マーケティングや広告の分野で広く活用される「バリアブル印刷」とは、印刷物の内容を個別に変更できる革新的な技術のこと。従来の印刷方法とは異なり、データに基づいて一つひとつの制作物を変更して印刷できるため、よりパーソナライズされたメッセージや情報を伝えられることが大きな特徴です。本記事では、バリアブル印刷の仕組みや具体的な活用事例、オフセット印刷/オンデマンド印刷との関係性、導入の準備や注意点について解説します。
バリアブル印刷とは
バリアブル印刷とは、印刷物の内容を個別に変更できる技術のことです。
バリアブル(variable)には、「変わりやすい」「一定しない」「変えられる」「可変の」という意味があり、‟可変印刷”とも呼ばれます。
従来、印刷と言えば、同じ内容の印刷物を大量に作成することが一般的でした。バリアブル印刷では、データをもとに、その内容を一つひとつ変更して印刷することができます。
例えば、10万人の顧客に向けて、それぞれに適した文章や画像の組合せを作成し、それぞれにカスタマイズされた10万パターンのダイレクトメール(DM)を発送する、というイメージです。
※固定部分・・・印刷物全体で共通の部分 (例)企業のロゴやアドレスなど
※可変部分・・・印刷物ごとに異なる情報や個別のデータ (例)宛名や個別の番号など
バリアブル印刷の仕組み
バリアブル印刷は、コンピュータと印刷機を組み合わせて行います。
印刷の準備段階として、印刷物のデザインや可変部分のデータを作成し、そのデザインやデータを印刷機に転送します。
バリアブル印刷では、印刷機が連続的に紙を送りながら、データに基づいてインクを変えたり、印刷ヘッドを制御したりすることで“可変部分”を印刷するのです。このプロセスを繰り返すことで、個別の印刷物を高速かつ効率的に作成することができます。
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バリアブル印刷のプロセス
- ①印刷物のデザインを作成する
- ②可変部分のデータを用意する
※可変部分のデータとは、個別の名前や住所など、印刷物ごとに異なる情報を指します - ③デザインと可変部分のデータを組み合わせて、印刷データを生成する
- ④生成した印刷データを印刷機に転送し、印刷の準備を行う
- ⑤印刷機が印刷を開始し、連続的に紙を送りながら、データに基づいて可変部分を印刷する
- ⑥印刷が完了したら、個別の印刷物が出力されます
バリアブル印刷の具体的な活用事例
バリアブル印刷は、個別ニーズに合わせた印刷ができる利便性から、マーケティングや広告などの分野で広く活用されています。この項では、具体的なバリアブル印刷の活用事例を紹介します。
DMやハガキの宛名印刷
ダイレクトメール(DM)やハガキなどの宛名印刷によく利用されます。
例えば、DMのデザインは同じでも、受け取る人によって宛名や個別のメッセージを変更することが可能です。つまり、ターゲットに合わせてパーソナライズされたメッセージを伝えることができるのです。
ナンバリング、QRコード、バーコード
ナンバリングやQRコード、バーコードなど、個別の識別情報を印刷することも可能です。
入場チケットのナンバリング
イベントやコンサートなどの入場チケットには、一意の番号を付けることができます。これにより、入場管理やチケットの偽造防止にも役立ちます。
座席番号
劇場や会議などで使用される座席番号も印刷可能です。あらかじめ、それぞれ異なる座席番号が印刷されていれば、スムーズな案内や配置管理が実現します。
名刺、名札
個別の名前や役職を含む名刺、名札も、効率的に作成することができます。大量の名刺を個別に作成する必要がある場合や、特定のイベントに合わせた名札を作成する場合に有効です。
抽選券
プロモーションやイベントで使用される抽選券には、個別のシリアル番号や応募番号を印刷することが可能です。個別の番号を割り振ることで、公平な抽選や当選者の特定が容易になります。
地域振興券
地域振興のためのクーポン券や割引券など。地域や利用者に応じて異なる特典や情報を提供することが可能です。
クリアファイル、ステッカー、シール
プロモーションや販促のために制作されるクリアファイルやステッカー、シールなど。個別の顧客や利用者に合わせた特典やメッセージを提供することで、より効果的な販促活動が行えます。
以上が、バリアブル印刷の具体的な活用事例です。バリアブル印刷は、個別のニーズに合わせた印刷物を作成できる強力なツールと言えるでしょう。
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オフセット印刷/オンデマンド印刷との関係性
印刷と言えば、オフセット印刷、オンデマンド印刷という単語を思い浮かべることも多いでしょう。それぞれ異なる特徴を持つ印刷技術の概念や活用例、バリアブル印刷との関係性を説明します。
オフセット印刷とは
オフセット印刷は、版を使った印刷方法のこと。版のインク(CMYK)を直接紙に転写するのではなく、版に塗られたインクを一度、転写(オフ)してから、紙に印刷(セット)する方法です。非常に鮮明な印刷が可能で、高品質な印刷物を大量生産する際に有効であり、書籍、雑誌、チラシ、パンフレットなどの印刷に広く利用されています。
オンデマンド印刷とは
オンデマンド印刷は、版を使わずに印刷する方法のこと。電子写真方式やインクジェット方式などを利用したデジタル印刷機による印刷方法です。データの入稿後すぐに印刷処理が可能です。
オンデマンドとは、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」という意味を持ちます。そのため、小ロットや短納期の印刷物の場合や、柔軟な対応が求められる際に有効です。
バリアブル印刷との関係性
バリアブル印刷と、オフセット印刷/オンデマンド印刷の関係性とは、そもそも印刷手法へのアプローチが異なります。
オフセット印刷は、版を使って印刷内容を固定して印刷するため、同じものを大量に刷る際に適しています。バリアブル印刷をオフセット印刷の手法で行う場合は、版の差し替えが大量に発生することになり現実的ではありません。
バリアブル印刷を行う際には、データ入稿後すぐに印刷工程に入れるデジタル印刷機(オンデマンド印刷)を利用することで、DMなどパーソナライズされた印刷物を効率的に作成できます。
バリアブル印刷を成功させるための注意点
バリアブル印刷を成功させるための注意点について解説します。
- 正確なデータの準備
バリアブル印刷では、個々の顧客に対して異なる情報を印刷するため、正確なデータの準備が必要です。データの入稿方法やフォーマットについて、印刷業者との連携を図り、要件を明確にすることが重要です。データの品質チェックやテスト印刷なども行い、正確な情報が印刷されることを確認しましょう。 - デザインとレイアウト
バリアブル印刷では、デザインとレイアウトにも注意が必要です。
テンプレートの設計や変数の位置、フォントや画像の使い方など、個別情報との組み合わせによっても印刷結果が異なることを考慮しましょう。また、視認性や印刷品質にも配慮し、必ずテスト印刷を行い、デザインの確認を行いましょう。 - プライバシーと個人情報の管理
個別の顧客情報を印刷物に含める場合、個人情報やプライバシーの保護に十分な注意を払いましょう。適切なセキュリティ対策やデータの暗号化、情報の取り扱い方針の明示などを行い、個人情報漏えいのリスクを最小限に抑えるようにしましょう。
バリアブル印刷を他社に委託する場合は、プライバシーマークやISMSを取得している企業など、セキュリティ面で信頼がおける会社に発注することをおすすめします。
バリアブル印刷を成功させるためには、データの正確性やプライバシーの保護など、印刷後にミスや事故が起こらないようにするための細心の注意が求められます。
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バリアブル印刷に必要な準備
バリアブル印刷を行うには、以下の準備が必要です。
- データベースの整備
バリアブル印刷を行う際に、顧客の属性や購買履歴などのデータを活用する場合が多くあります。そのため、顧客データベースの整備や管理を行い、正確な情報を活用できる状態にしておきましょう。 - データのセグメント化
バリアブル印刷では、異なる顧客セグメントに対して適切な情報を提供することが可能です。
データをセグメント化し、ターゲットに合わせたメッセージやデザインを作成するための基盤を整えましょう。 - テスト印刷の実施
バリアブル印刷では、異なるデータやコンテンツの組み合わせによって印刷結果が変わることがあります。テスト印刷を実施し、データの正確性や印刷品質の確認を行いましょう。
以上が、バリアブル印刷を行う際に必要な準備です。
データの整備やデザインの確認など、慎重さが求められます。すべての印刷が終わってから、イメージと違う印刷物に気付くようでは手遅れです。必ずテスト印刷を行い、正しい情報が記載されているか事前に確認しましょう。
適切な活用により、顧客満足度の向上に
バリアブル印刷は、顧客のニーズに合わせた印刷を効率的に実現できる手法です。正確なデータやデザインパターンの準備、個人情報の管理など、事前準備に手間がかかる反面、顧客への個別対応が可能になるのは大きなメリット。適切な活用によって、さらなる顧客満足度や応答率の向上を目指しましょう。
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もちろん“差し込み印刷”ほか、さまざまな印刷方式にも対応可能です。
バリアブル印刷は、事前準備に手間がかかることがデメリットとも言われます。
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