近年、SNSやビジネスニュースを中心に「管理職罰ゲーム化」という言葉が飛び交っている。こうした状況を受け、エフアンドエムネット株式会社は管理部門向けのビジネスメディア「労務SEARCH(労務サーチ)」にて、企業で働く男女300名を対象に中間管理職に関するアンケート調査を実施した。
本調査は、アンケート結果をもとに人事労務の視点から「選ばれる管理職像」を再定義するためのヒントを探るものであり、中間管理職を取り巻く現状や昇進に対する意識などを通じて、現代の日本企業におけるマネジメント層の課題を明らかにしている。
調査背景
現代の日本企業において、中間管理職を取り巻く環境は大きく変化している。かつてはキャリアアップの象徴とされてきた「昇進」が、現在ではリスクや負担として捉えられる側面も指摘されている。
労務SEARCHでは、こうした状況を踏まえ、中間管理職に関する本調査を実施。今後も管理部門の悩みを解決できるようなアンケート調査を実施し、バックオフィス業務に役立つ価値ある情報を発信していくとしている。
主な調査結果
・「はい」は約4割、実質的なマネジメント層を含めると半数以上に
・63.3%が「管理職になりたくない」と回答する衝撃
・理由のトップは「責任・プレッシャーの増大」、次いで労働時間への懸念
・半数以上が実感する管理職の“罰ゲーム化”
・ストレスの主因は「上司・経営陣からのプレッシャー」
・認知度は約7割、しかし「よく知っている」層は限定的
・5割以上が「最低限の範囲での働き方」を意識
・「効率性」と「ワークライフバランス」が二大キーワード
・“管理職=罰ゲーム”と思わせない存在への期待
「はい」は約4割、実質的なマネジメント層を含めると半数超

調査回答者の現在の役職について、「はい(管理職である)」と答えたのは39.7%。「いいえ(一般職・非管理職)」は48.0%と半数弱である。一方、注目すべきは「役職なしだが実質的にマネジメント業務あり」と回答した12.3%の存在だ。
これらを合計すると、全体の52.0%が何らかの形で管理・調整業務に従事していることになる。人事労務の視点で見れば、役職手当や正式な権限が十分に与えられないまま、実質的な責任だけを負わされている「名ばかりマネジメント層」が一定数存在していることが示唆される結果だ。
これは、組織図上の役職定義と実務の実態が乖離しているサインであり、現場の疲弊を招く大きな要因の一つといえるだろう。
63.3%が「管理職になりたくない」と回答
将来的に管理職になりたいかどうかを尋ねたところ、「あまりなりたくない」との回答が63.3%に達し、「なりたい」の36.7%を大きく上回った。
この「管理職離れ」ともいえる数字は、企業にとって次世代のリーダー育成が極めて困難なフェーズに入っていることを示唆している。
労働価値観が多様化する中で、組織への貢献よりも個人の生活やメンタルヘルスを優先する傾向が強まっている中、管理職というポジションが持つ「魅力」よりも「負担」が勝ってしまっている現状が浮き彫りとなった。

理由のトップは「責任・プレッシャーの増大」、次いで労働時間への懸念

管理職になりたい(またはなりたくない)理由(複数回答)では、「責任・プレッシャーが増えるから」が52.3%で最多となった。次いで「長時間労働になりそうだから」が33.3%、「部下育成や人間関係が面倒だから」が32.0%と続く。
一方で、ポジティブな理由である「報酬・給与が上がるから」は31.3%に留まり、責任感による精神的負担や時間的拘束を相殺できるほどの経済的インセンティブを感じられていない状況がうかがえる。
人事労務としては、単なる給与改定だけでなく、管理職の「職務範囲」を再定義し、過度な責任集中を分散させる組織設計が急務といえそうだ。
半数以上が実感する管理職の“罰ゲーム化”
自社の管理職が「罰ゲーム化」していると感じるかどうかとの問いには、「ある程度感じる」45.7%と「非常に感じる」11.0%を合わせ、56.7%が肯定的に回答した。一方で「全く感じない」は8.7%に留まる。
「罰ゲーム」という言葉がこれほど浸透している背景には、プレイングマネジャーとしての過剰な業務量、ハラスメント対策への過度な神経質、上意下達の板挟みといった、現代特有の閉塞感がある。
一般社員は、自身の数年後の姿を上司に見る際、そこに希望ではなく「苦労」を見出している状況がうかがえる。この認識を覆さない限り、どれだけ採用や研修に力を入れても、組織の持続性は保つことは難しいといえそうだ。

ストレスの主因は「上司・経営陣からのプレッシャー」

管理職の仕事で最もストレスを感じる要素は、「上司・経営陣からのプレッシャー」が30.7%でトップ。次いで「業績・数字責任」16.3%、「部下育成・評価」11.7%となっている。
部下との関係性(育成・評価)よりも、上層部との関係性に強いストレスを感じている点が特徴的だ。組織の結節点である中間管理職が、上からの要求を咀嚼しきれずに現場へ下ろさざるを得ない「防波堤」としての限界を迎えている様子がうかがえる。
経営層は、中間管理職を単なる「伝達役」としてではなく、戦略を共創するパートナーとして尊重し、孤立させないサポート体制を構築する必要がありそうだ。
「静かなる退職」認知度は約7割、「よく知っている」層は限定的
「静かなる退職」についての認知度は、「名前は聞いたことがある」35.3%が最多。「よく知っている」は11.0%、「正直よくわからない」は29.7%、「全く知らない」は24.0%という結果になっている。
人事労務の視点では、この言葉の概念が着実に広がっている事実を重く受け止める必要がある。従来の「滅私奉公」的な働き方への強烈なカウンターとして、表面上は真面目に勤務していても、心の中では組織と心理的距離を置いている従業員が潜在的に増えている可能性を示唆する動きといえる。

5割以上が「最低限の範囲での働き方」を意識

自身が最低限の範囲での働き方を意識しているかとの設問では、「状況に応じて最低限を意識している」が45.0%、「いつも最低限で働いている」が8.7%となり、合わせて過半数が「やりすぎない働き方」を選択した。一方、「特に意識していない」は38.0%、「常に高い成果を出すことを重視している」は8.3%に留まった。
この結果は、多くの従業員が「給与に見合った以上の努力はしない」という合理的、あるいは諦めを伴った姿勢で業務に臨んでいることを示している。
特に管理職の多忙さやプレッシャーを目の当たりにしている一般社員にとって、頑張りすぎることは「罰ゲーム」への片道切符に見えているのかもしれない。エンゲージメント向上を叫ぶ前に、まずは「頑張ることが損ではない」と思える納得感のある評価・処遇制度の整備が求められる。
理想の管理職像は「効率性」と「ワークライフバランス」
理想の管理職像(複数回答)では、「効率的にチームを回して成果を上げる」が53.7%、「ワークライフバランスを尊重する」が51.3%で上位を占めた。次いで「評価・報酬を公平にする」が38.3%、「部下の成長・キャリア支援を重視」が37.0%と続いた。
かつての「24時間戦う」マネジャー像ではなく、スマートに業務を完結させ、部下の私生活も大切にする「マネジメントのプロフェッショナル」が求められている実態がうかがえる。
また、自身の成果よりも「チームメンバーの利益と成長」を最大化させる調整役としての役割に対する期待が高まっていることも明らかとなった。

“管理職=罰ゲーム”と思わせない存在への期待
「“管理職=罰ゲーム”と思わせない存在」を選択した人は16.3%であった。比率としては高いとはいえないが、「今の管理職を見ていたらとてもそうは思えない」との受け止めが背景にある可能性も考えられる。
人事労務の観点では、管理職の「仕事の面白さ」を取り戻す取り組みが課題となる。事務作業や細かな調整業務をAIやDXツールに移行し、管理職が本来担うべき「意思決定」や「対話」に集中できる環境を整備することが求められる。
さらに、その役割に見合った報酬体系を構築することも重要である。これらの条件が整うことで、管理職が再び「なりたい職業」として位置づけられる可能性がある。
調査概要まとめ
今回の300名アンケートの結果は、日本企業の多くが抱える「中間層の空洞化」と「労働意欲の変容」を明確に映し出す内容となった。「管理職離れ」や「静かなる退職」は、従業員のわがままというよりも、過剰な負荷と不透明なリターンのバランスが崩れたことによる結果であることがうかがえる。
人事労務の観点では、今回の結果を踏まえ、以下の3点が重要な論点となる。
・管理職の職務再定義:プレイング業務を削減し、マネジメントや部下との対話に専念できる「時間的・精神的余裕」を創出すること。
・心理的安全性の確保:上層部からの過度なプレッシャーを緩和し、板挟み状態にある中間管理職を支えるメンタルヘルスケアおよび支援体制を強化すること。
・成果と報酬の直結:責任の重さにふさわしい魅力(報酬・権限・経験価値)を再設計し、昇進へのモチベーションを再構築すること。
管理職が生き生きと働き、一般社員がその背中を追いかけたいと思える組織文化への転換が、2026年以降の企業成長を左右する重要な鍵となりそうだ。労務SEARCHでは今後も、こうしたアンケート調査を通じて、人事・労務管理に関する課題解決に資する情報を発信していくとしている。
<調査の実施概要>
調査対象:企業で働く男女300名
調査方法:インターネット調査
調査日:2025年2月17日~2025年3月3日
掲載記事:「管理職=罰ゲーム」と感じる層が56.7%に!300名調査から見る昇進忌避と「静かなる退職」の連鎖
※本調査データの引用元※
出典:労務SEARCH(https://romsearch.officestation.jp/report/53657)
本記事の出典元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000120587.html



