物流コストの最適化｜外部委託か自社対応か迷ったときの判断基準

近年の物流業界を取り巻く環境は、人手不足やコスト高騰といった深刻な問題に直面し、企業にとって物流コストの最適化は避けて通れない課題となっています。本記事では、自社対応と外部委託のそれぞれのメリット・デメリットから、アウトソーシングを成功させるためのチェックポイント、そして将来的な事業成長に向けた物流戦略について解説します。 物流コストの見直しを考える際の判断材料として、ぜひご活用ください。 

物流コストの現状と課題

近年、企業の物流コスト比率は上昇傾向にあります。日本ロジスティクスシステム協会の速報（2024年度調査）によれば、全業種平均で5.45％となり、前年より0.45ポイント増加しました（※出典）。コスト上昇の背景には、運賃の高騰や人手不足、燃料価格の変動など複数の要因があります。  

こうした背景から、企業は自社の物流体制を見直すと同時に、外部委託の活用や物流管理システム導入を含めた戦略的な決定を迫られています。人材難の中、効率的な物流の実現には、部分最適ではなく全体最適の視点が求められます。 

※出典：JILSニュース 2024.12.26「2024年度物流コスト調査結果(速報値)の公表 ~売上高物流コスト比率は5.45％~」

物流コストが企業に与えるインパクト

人手不足と物流費高騰の要因

近年、輸送業界では深刻なドライバー不足が問題視されており、輸送コストが高止まりする大きな要因となっています。さらに、燃料費の上昇や小口配送の増加などもコストを押し上げています。特にEC市場の拡大により配送件数が増加したことで、一つひとつの荷物に対する対応が細分化し、結果的に人手もコストもかさんでしまいます。
これらの背景を踏まえた上で、企業は効率化策を講じるか、外部パートナーを活用するかといった判断を迫られています。 

自社対応という選択肢とその限界

自社で物流を完結させる方法は、コストと品質をコントロールしやすい一方、リソースの集中が必要になるなどの課題もあります。

自社対応を行う場合、社内で直接管理できる安心感が得られます。運送のキャパシティや倉庫の管理方法を細部にわたって把握できるため、品質やセキュリティへのこだわりを徹底することも可能です。また、自社ノウハウの蓄積が長期的なコスト削減と企業独自の強みを生むケースも少なくありません。

しかし一方で、自前の設備投資や人材確保など、初期コストと維持コストが大きくなりがちです。特に物流拠点の増設やITシステム導入には専門的な知識が必要になるため、強力なリソースの確保が欠かせません。自社対応を続けるあまり、コア業務への時間や人材を十分に割けなくなるリスクも考慮する必要があります。

コスト管理と品質維持のバランス

社内リソースの効率的活用

物流対応には、専門的な知識やノウハウを要する作業工程が多く含まれます。人材が社内に十分確保できている場合は、自社の強みに直結したサービスを提供しやすいメリットがありますが、反面、専任スタッフや専用設備を整備する必要があるため、運営負担が大きくなることも事実です。社内リソースを適切に配分しながら、コア事業とのバランスを取る工夫が求められます。 

アウトソーシングがもたらす成長機会

人手不足やコスト管理の難しさを背景に、外部委託のニーズは高まりを見せています。どのようなタイミングで外注を検討すべきか、そのメリットを含めて見ていきましょう。 

外部委託のメリット

物流業務をアウトソーシングする最大のメリットは、専門家のノウハウや既存インフラを活用できる点にあります。豊富な実績を持つ物流企業に委託すれば、人手不足や保管場所の問題を一気に解消できる可能性があります。また、契約形態によっては納期やサービス品質が明確に設定されるため、コスト管理も一本化しやすくなるでしょう。 

生産性と効率性の向上

コア業務への集中

企業がコア業務に集中できるという付随効果も見逃せません。物流対応に割いていた人材を製品開発や販売戦略に振り向けることで、会社全体の成長を後押しすることが期待できます。外部委託を検討する際は、単なるコスト削減だけでなく、中長期的な企業価値向上の視点からも判断を行うことが重要です。 

外部委託を選択するタイミング

企業が新たな販売チャネルに参入する際や、季節繁忙期に対応しきれなくなるほど業務量が急増する場合などは、外部委託を検討する良い契機となります。社内リソースが手一杯になる前に対応策を講じることで、サービス品質を落とさずに事業を拡大できます。また、物流にかかる設備投資が回収できないと判断した場合にも、早めにアウトソーシングへ切り替えることを検討すべきでしょう。

外部委託か自社対応か迷ったときの判断基準

物流業務を自社で行うべきか、それとも外部に委託すべきか――判断に迷った際は、以下のような観点から検討することが有効です。

これらの基準をもとに、「どちらが自社の成長戦略に合致するか」を軸に判断すると、単なるコスト比較にとどまらない、より本質的な選択がしやすくなります。

アウトソーシングを成功させるためのチェックポイント

外部委託を検討する際は、選定すべき企業の実績や契約条件など確認すべきポイントが多々あります。

委託先企業選定の基準 

業界での実績や技術力、対応可能な範囲などをよく調べることで、期待する品質やコスト削減効果をしっかり得ることができます。企業規模だけでなく、過去の導入事例やカスタマーサポート体制も大きな決め手になります。物流分野はトラブルや緊急対応がつきもののため、柔軟な体制や即時対応力を持つ企業を選ぶことが重要です。自社の事業内容に合ったノウハウを十分に持っているかどうかも相性を見極めるうえで不可欠な要素となります。

契約前に確認すべき重要事項 

運用体制、情報連携の仕組み構築 

一度契約を結んだ後でも、定期的なミーティングやレポーティング制度を設けることで、実際の運用状況を把握しやすくなります。万が一問題が起きた際に早期に対処できる体制を築くことが、長期的なパートナーシップを維持するポイントといえるでしょう。情報連携の仕組みやデータの扱い方についても事前によく検討しておきましょう。

事業成長につなげるための物流戦略

物流コストの最適化は単なる経費削減だけでなく、企業の事業拡大へと直結する大きな可能性を秘めています。

物流戦略を練り直し、最適化を図ることは、単にコストを減らすためだけの取り組みではありません。物流効率が改善すれば、より迅速な商品配送や在庫状況の可視化が進み、顧客満足度の向上や新規事業のスピーディーな立ち上げにも寄与します。事業成長のための土台として、安定した物流体制は欠かせません。

今後も業界全体で人手不足や燃料費高騰といった課題が続く中、アウトソーシングを含めた柔軟な物流体制の構築は競争力強化の大きな鍵となります。必要に応じて専門家の力を借りながら、戦略的にコストを抑え、コアビジネスに注力できる環境を整えることが、企業の継続的成長を支えるポイントになるでしょう。