企業や組織におけるITインフラの重要性が増す中、PCやスマートフォン、タブレットをはじめとするIT資産をどのように管理・運用すべきかという課題が顕在化しています。IT機器はスペックの進化やOSのアップデートが非常に早く、運用管理の負荷やセキュリティリスク、コスト管理の煩雑化が情シス(情報システム部門)の大きな負担となっています。
こうした課題を解決し、IT資産の価値と運用効率を最大限に引き出す手法がLCM(ライフサイクルマネジメント)です。本記事では、LCMの基本的な概念から、注目される背景、LCMサービス導入のメリットや注意点、活用事例まで、実務に役立つ知識を体系的に解説します。
▼【管理体制の課題解決に】戦略・運用・実務の3つの視点から、物流マネジメントの要点を解説した単語集をご用意しました。社内の共通言語化や管理プロセスのアップデートにぜひご活用ください。

LCM(ライフサイクルマネジメント)とは
LCMの基本概念
LCM(Life Cycle Management:ライフサイクルマネジメント)とは、IT機器やソフトウェアなどの資産について、企画・調達から導入、運用・保守、廃棄・更新に至るまでの「生涯サイクル(ライフサイクル)」全体を一貫して計画・管理・運用する手法、仕組みのことを指します。
従来のIT資産管理が「現在の保有台数や保管場所の把握」に留まりがちであったのに対し、LCMでは資産の調達計画からセキュリティ対策、最終的なデータ消去・処分までを包括的にコントロールする点が特徴です。

▼IT資産管理については、こちらの記事で詳しく解説しています。どうぞご覧ください。
IT資産管理ツールとLCMサービスの違い
IT資産管理を検討する際、「管理ツール(MDMや資産管理ソフト)」と「LCMサービス」の違いについて混同されるケースが多く見られます。両者の決定的な違いは「ツールの提供」か「運用の代行・伴走」かという点にあります。
●IT資産管理ツール(ソフト・SaaSなど)
端末の稼働状況、インストールされているソフトウェア、ライセンス情報などを「可視化・一元管理するためのシステム」。ツール自体の運用や実務作業は自社内で行う必要があります。
●LCMサービス(アウトソーシング)
ツールの活用にとどまらず、機器の調達、初期設定(キッティング)、配送、運用・在庫管理、故障・交換対応、データ消去、廃棄・リユースといった実務作業や運用管理プロセス全体を外部の専門企業が代行するサービスです。
▼MDM(モバイルデバイス管理)については、こちらの記事で詳しく解説しています。どうぞご覧ください。
LCMが注目・必要とされる背景
近年、多くの企業でLCMサービスへのニーズが高まっている背景には、以下のような環境変化と課題が存在します。
- 働き方の多様化と管理対象デバイスの増加
テレワークやハイブリッドワークの普及に伴い、社員の利用する端末(PC、スマートフォン、モバイルWi-Fiなど)が社外へ持ち出される機会が急増しました。持ち出し端末の増大に伴い、物理的な紛失・盗難リスクや、個々の端末状態の把握が難しくなっています。 - 情シスの業務負荷増大(「ひとり情シス」問題)
IT化が進む一方で、多くの企業で情報システム部門の人手不足が深刻化しています。いわゆる「ひとり情シス」や「兼任情シス」の環境では、日々の問い合わせ対応やトラブル処理、PCのセットアップ作業などのノンコア業務に追われ、経営に寄与するIT戦略やセキュリティ強化といった本来取り組むべきコア業務にリソースを割けない状況が続いています。 - セキュリティリスクとコンプライアンスの強化
OSのサポート終了(End of Life)への対応、シャドーIT(会社非認可のデバイス・アプリ利用)の防止、退職者端末の適切な処理など、管理の不備は即座に情報漏えいリスクへと直結します。ガバナンスとコンプライアンスを高度に維持するためにも、厳格な資産管理体制が求められています。
LCMサービスの主なプロセス(業務内容)
LCMサービスでは、IT資産のフェーズに合わせて主に以下の4つのプロセスを一元的にサポートします。
調達・計画(Acquisition & Planning)
業務要件や予算に合わせ、最適なスペックの機器を選定・調達します。購入だけでなくリースやレンタル、各種ソフトウェアライセンスの一括手配など、財務的・運用的に最適な契約形態の提案を受けられます。

導入・構築(Implementation & Kitting)
調達した機器を使用可能な状態に設定する「キッティング」を行います。OSの初期設定、必要なアプリケーションのインストール、セキュリティ対策ソフトの設定、ID/パスワードの発行、資産管理シールの貼付、指定拠点への配送までを効率的に実施します。

キッティングについては、以下の記事で詳しく解説しています。どうぞご覧ください。
運用・保守(Operation & Maintenance)
導入後のトラブル対応やヘルプデスク対応、修理・代替機(プール品)の手配、OSやソフトウェアのバージョン管理などを行います。日常的な運用の負担を大幅に軽減し、安定したIT利用環境を維持します。

廃棄・撤去(Disposal & ITAD)
耐用年数を迎えた機器や不要になった端末を適切に処分手配します。記憶媒体からの確実にデータを消去し、データ消去証明書を発行します。また、リサイクルや再利用、CSR/SDGsにも配慮した適正な処分を行います。
※ITAD:「Information Technology Asset Disposition」の略語。パソコン等使用済みのIT資産を適正に処分・再利用すること

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PCやスマートフォンなど各種デバイスの調達からキッティング、運用・保守、回収・データ消去、廃棄・リユースまで、デバイスのライフサイクルにおけるすべてのノンコア業務をワンストップで支援します。
最適な機種選定のサポート/各拠点への発送・回収対応/MDM(モバイルデバイス管理)設定/シリアル番号やIMEIのユニーク管理/資産台帳の作成・更新/データ消去 など
LCMサービスを導入するメリット
業務効率の向上、コスト削減、セキュリティの強化、さらには環境負荷の軽減とSDGs(持続可能な開発目標)への貢献など、LCMサービスを導入することで多くのメリットを享受できます。
情シスがコア業務に集中できる(業務効率化)
機器の調達からキッティング、ヘルプデスク、廃棄手配といった煩雑な実務をアウトソーシングすることで、社内IT担当者の業務負担が劇的に軽減されます。これにより、全社的なDX推進やIT戦略の立案、セキュリティポリシーの再構築など、企業の付加価値を高めるコア業務へリソースを集中させることが可能になります。

IT関連コストの最適化・見える化
IT機器の管理不足による重複購買や使われていないライセンスの放置を防ぎ、IT投資の無駄を排除します。また、定額化された運用コストにより、将来的なIT予算の予測が容易になり、財務面での安定性と透明性が向上します。
セキュリティとコンプライアンスの強化
すべての端末のセキュリティステータス(OSバージョン、セキュリティパッチ適用状態、ウイルス対策ソフトの稼働など)を一元的に把握・管理できるようになります。また、廃棄時の完全なデータ消去処理により情報漏えい事故を未然に防ぎ、信頼性のあるIT環境を整えることができます。

環境負荷の軽減とSDGsへの貢献
製品のライフサイクルを適正に管理・最適化することで、機器の長寿命化やリユース・リサイクルを推進できます。不要な廃棄物を削減し、持続可能な社会の実現(SDGs)に貢献する企業の姿勢を示すことができます。
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LCMサービス導入における注意点・課題
メリットの多いLCMサービスですが、導入にあたっては以下の点に留意する必要があります。
- 導入・運用における初期コストおよび月額費用
外部サービスを利用するため、アウトソーシング費用が発生します。「社内人件費+見えにくい管理コスト」と「委託費用」を比較し、費用対効果(ROI)を慎重に見極めることが重要です。 - 自社内へのノウハウ蓄積が難しくなる懸念
運用を完全に丸投げしてしまうと、社内にITインフラのナレッジが残りにくくなります。定期的な報告会の実施やナレッジの共有体制を構築しておくことが推奨されます。 - 委託先とのコミュニケーション・仕様定義のすり合わせ
自社のセキュリティルールや導入手順に合わせたキッティング仕様を明確に定義し、委託先と強固な連携体制を築く必要があります。
これらの注意点については、以下の記事で紹介しています。社内PC・各種デバイスのLCMを見直し、現場の負担と業務コストを劇的に削減する方法、LCMサービスを選ぶ際の比較ポイントについても解説しています。
LCMサービスの活用事例
企業の規模や成長フェーズによって、IT資産管理における課題やLCMの活用目的は大きく異なります。自社の状況に合った活用イメージを把握することが重要です。
中小企業の活用例
~リソース不足の解消とセキュリティ基盤の標準化~
【抱える課題】
専任のIT担当者が不在(いわゆる「ひとり情シス」や他部門との兼任)であるケースが多く、日々のキッティング作業や問い合わせ対応、端末の故障対応に追われ、本来業務やIT投資の検討に時間を割けない状況に陥りがちです。
【LCMサービスの活用と効果】
調達からキッティング、ヘルプデスク、故障時の代替機手配までを外部に委託することで、1人あたりの業務負荷を劇的に削減できます。また、手作業による設定ミスや管理漏れを防ぎ、会社全体で統一されたセキュリティ標準を迅速に確立することが可能になります。
大企業の活用例
~ガバナンス強化と一元的な資産トラッキング~
【抱える課題】
全国の拠点や海外支社、リモートワーク環境に分散する数千台〜数万台規模のデバイス管理が必要となります。部門ごとの勝手な端末購入(シャドーIT)や、退職・異動に伴う端末の回収漏れ、棚卸し作業の膨大な工数が大きな懸念点となります。
【LCMサービスの活用と効果】
全社的にIT機器のライフサイクルプロセスを統合管理し、ライフサイクル全体での資産トラッキング(追跡管理)を実現します。OSのアップグレード対応や端末の定時更新(リフレッシュ)を計画的に自動化・標準化することで、全社的なガバナンス強化と運用コストの最適化を同時に達成できます。
【導入事例のご紹介】
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LCMに関するよくある質問(FAQ)
- Qキッティング代行とLCMサービスは何が違うのですか?
- A
キッティング代行は「端末の初期設定やアプリのインストール」という特定工程作業の請負を指します。一方、LCMサービスは、調達からキッティング、日常の運用・ヘルプデスク、最終的な廃棄・データ消去まで、IT資産の生涯プロセス全体を一元管理・サポートする包括的なサービスです。
- Q数台〜十数台程度の少規模な端末数でも利用できますか?
- A
利用可能です。LCMサービスは大規模企業向けと思われがちですが、スタートアップや中小企業のように「IT専任担当者がおらず、数台〜十数台のセットアップや管理に手が回らない」という環境こそ、導入効果を実感しやすい特徴があります。対応可能な最小台数や運用支援の範囲は事業者によって異なるため、自社の運用規模に柔軟に対応できるサービスを選ぶことがポイントです。
- Q端末の廃棄時、データの漏えい対策は安全ですか?
- A
第三者機関の厳格な基準に準拠したデータ消去プロセスを採用している事業者であれば、十分な安全性が担保されているといえるでしょう。データ消去作業完了後には正式な「データ消去証明書」が発行されます。
なお、委託先の選定にあたっては、作業プロセスの透明性に加え、プライバシーマーク(Pマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの第三者認証を取得している企業を選ぶと、より安心です。
自社に最適なLCMでIT資産運用を効率化
LCM(ライフサイクルマネジメント)は、単なるコスト削減策にとどまらず、情シスの業務負担を軽減し、企業のセキュリティ基盤とガバナンスを強化するための戦略的な取り組みです。
調達・導入・運用・廃棄までのサイクルを最適化し、外部の専門サービスを活用することで、社内リソースを「事業成長に直結するコア業務」へ集中させることが可能になります。自社の現状の課題や運用フェーズに合わせ、最適なLCMサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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