【この記事の要点】
- 根本的な違い:「会社」が従業員の代わりに給与所得の所得税を精算するのが年末調整、「個人」で1年間のすべての所得を申告・精算するのが確定申告です。
- 両方必要な会社員:副業所得が20万円を超える人や、医療費控除・初年度の住宅ローン控除などを受ける人は、年末調整後に確定申告を行う必要があります。
- 出し忘れた時の対処:年末調整で控除証明書の提出が間に合わなかった場合でも、自分で確定申告(還付申告)を行えば控除を取り戻せます。
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「年末調整と確定申告、どちらをやればいいの?」「会社員でも確定申告が必要なケースとは?」と疑問に思う方は少なくありません。 どちらも「1年間の所得税を正しく計算して精算する」という目的は同じですが、「誰が計算するか」「対象となる所得の種類」が大きく異なります。
本記事では、年末調整と確定申告の根本的な違いから、会社員でも両方必要なケース(副業や医療費控除など)、手続きを忘れた場合の対処法までをわかりやすく解説します。
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年末調整と確定申告の比較
| 比較項目 | 年末調整 | 確定申告 |
| 手続きをする人 | 勤務先の会社(事業主) | 自分自身(個人) |
| 対象となる所得 | 「給与所得」のみ | すべての所得(給与、事業、不動産、雑所得など) |
| 手続きの時期 | 毎年11月〜12月頃 | 翌年の2月16日〜3月15日(※還付申告は翌年1月1日から5年間可能) |
| 主な対象者 | 会社員、公務員、パート・アルバイトなど | 自営業、フリーランス、年金受給者、特定の条件に当てはまる会社員 |
| 適用できる控除 | 基礎控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除、住宅ローン控除(2年目以降)など | 年末調整でできる控除すべて+医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税など)、雑損控除、初年度の住宅ローン控除 |
年末調整、確定申告とは
比較表の内容を踏まえ、それぞれの制度の目的と基本ルールを解説します。
年末調整とは
年末調整とは、会社が従業員に代わって「給与所得」にかかる所得税を正しく再計算し、過不足を調整(精算)する手続きです。
会社員は毎月の給与から、おおよその金額で所得税が天引き(源泉徴収)されています。12月の最後の給与が確定したタイミングで、生命保険料控除や扶養控除などを反映させて正しい税額を算出し、天引きしすぎていた場合は「還付(返金)」、足りなかった場合は「追加徴収」を行います。
1ヶ所からしか給与を受け取っておらず、かつ給与以外の収入がない一般的な会社員であれば、この年末調整だけで1年間の所得税額が確定するため、原則として個人での確定申告は不要です。

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確定申告とは
確定申告とは、1月1日から12月31日までに生じた「すべての所得(全10種類)」を個人で計算し、翌年の決められた期間内に税務署へ申告・納税する手続きです。
自営業やフリーランスの方が毎年行うメインの手続きですが、会社員であっても例外ではありません。「年末調整では処理できない控除(医療費控除など)」を受けたい場合や、「会社に知られていない給与以外の所得(副業など)」がある場合は、年末調整を終えた源泉徴収票のデータをもとに、個人で確定申告を追加で行う必要があります。

会社員が確定申告する必要がある場合
原則として会社員は年末調整だけで所得税の精算が完了しますが、以下の条件に当てはまる場合は、会社での年末調整とは別に(または年末調整の代わりに)個人で確定申告を行う必要があります。
副業など、給与以外の所得が「年間20万円」を超える場合
会社員が最も注意すべきなのが「副業」による所得です。本業の給与以外に、以下のような所得(収入から経費を引いた金額)の合計が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。
■ 会社員でも確定申告が必要になる「給与以外の所得」
- 不動産所得: アパート・マンション、駐車場などの賃貸経営
- 事業所得: 個人での自営業、副業の事業収入
- 譲渡所得: 株式、不動産、金地金などの売却益
- 一時所得: 生命保険の満期保険金・一時金、懸賞金など
- 雑所得: 副業(原稿料・業務委託・アフィリエイト等)、暗号資産(仮想通貨)の売買益、先物取引、公的年金など
- 退職所得: 退職金や小規模企業共済の共済金(※受給に関する申告書を未提出の場合など)
- 配当所得: 上場株式などの配当金(※確定申告不要制度を選択しない場合) (※このほか、山林を売却した際の「山林所得」なども対象となります)
1年間の給与収入が「2,000万円」を超える場合
法律上、年間の給与収入が2,000万円を超える人は、会社での年末調整の対象外となります。そのため、年末調整を受けずに自分で確定申告を行って所得税を精算しなければなりません。
勤務先が2カ所以上ある場合(ダブルワーク)
年末調整は「メインの勤務先(主たる給与の支払者)」の1カ所でしか受けられません。そのため、2カ所以上から給与をもらっている場合は、メインの勤務先で年末調整を受けた後、もう1つの勤務先の給与(源泉徴収票)を合算して確定申告を行う必要があります。
なお、副業先(2カ所目以降の勤務先)から交付される源泉徴収票に「乙欄」の記載がある場合は、年末調整の対象外となるため確定申告が必要です。「乙欄」の仕組みや確定申告の具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説しています。

年末調整では処理できない「特定の控除」を受けたい場合
以下の控除は会社の年末調整では手続きができません。払いすぎた税金の還付を受けたい場合は、自分で確定申告(還付申告)を行う必要があります。
■ 年末調整では手続きできず、確定申告が必要な「控除」
- 医療費控除: 1年間に自己負担した医療費が原則10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合(セルフメディケーション税制を含む)
- 寄附金控除(ふるさと納税など): 寄附先が6自治体以上ある場合、またはワンストップ特例を利用しなかった場合
- 初年度の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除): 適用1年目のみ(※2年目以降は年末調整で処理可能)
- 雑損控除: 震災・風水害・火災などの災害や、盗難・横領によって資産に損害を受けた場合
- 外国税額控除: 米国株投資などで現地の外国所得税と日本の所得税が二重課税されている場合
- 特定支出控除: 通勤費や資格取得費などの業務に必要な自己負担額が、給与所得控除額の2分の1(最高97.5万円)を超えた場合
年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合
12月の給与をもらう前に退職し、その年のうちに別の会社へ再就職しなかった場合、元の勤務先で年末調整を受けることはできません。
払いすぎた所得税を取り戻すために、自分で確定申告を行います。

年末調整の出し忘れやミスを修正したい場合
年末調整後に保険料の控除証明書が見つかったり、扶養親族の変更手続きが漏れていたりした場合、会社側での再調整(翌年1月末まで)が間に合わなければ、確定申告を行います。
確定申告を行うことで正しい控除を適用し、税金の還付を受けることができます。

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よくある質問(FAQ)
- Q確定申告をする予定の従業員も、会社の年末調整は受ける必要がありますか?
- A
原則として、会社での年末調整は受ける必要があります。「医療費控除」や「副業」などの理由で確定申告をする予定であっても、給与収入が2,000万円以下であれば、まずはメインの勤務先で年末調整を受けます。その後、会社から発行された「年末調整済みの源泉徴収票」をもとに確定申告を行ってください。
- Q副業の所得が20万円以下なら、確定申告も年末調整も一切不要ですか?
- A
所得税の確定申告は不要ですが、「住民税の申告」は必要です。 副業所得が20万円以下の場合、税務署への「所得税」の確定申告は免除されますが、お住まいの市区町村への「住民税」の申告は金額にかかわらず必要(免除ルールがない)ですのでご注意ください。
- Q年末調整で書類を出し忘れたまま、確定申告もしないとどうなりますか?
- A
本来受け取れるはずの還付金(税金の戻り)が受け取れず、損をします。生命保険料控除などの適用漏れであれば罰則はありませんが、払いすぎた税金は戻ってきません。過去5年分まで遡って申告(還付申告)ができるため、気づいた時点で早めに申告することをおすすめします。(※逆に、副業などの「追加で払うべき税金」の申告を怠った場合は、無申告加算税などのペナルティが科されます。)
【コラム】実務の盲点|年末調整に紛れ込む「控除対象外書類」と不備チェックの負荷
年末調整の実務において意外なタイムロスを生みやすいのが、ふるさと納税の寄附金受領証明書など「年末調整では処理できない控除対象外書類の混入」です。
税金の控除に関わる書類であるため、従業員が「会社に提出するもの」と誤解して提出してしまうケースがあります。担当者は提出書類を1件ずつ精査し、対象外であれば理由を添えて返却・差し戻しのアナウンスを行わなければならず、繁忙期の大きな負担要因となります。
BODの「年末調整代行サービス」では、単なるデータ入力や計算にとどまらず、提出された各種申告書・証明書の精緻な「不備チェック」や対象外書類の仕分け、従業員への差し戻し・確認対応まで一貫して代行が可能です。人事担当者が細かなイレギュラー対応に追われることなく、本来のコア業務に集中できる運用をサポートします。
適切な切り分けで申告漏れを防ぐ
ひとつの勤務先から給与を受け取っている一般的な会社員であれば、基本的には会社の「年末調整」だけで年間の所得税の精算は完了します。
しかし、副業収入がある方や医療費控除などの適用を受ける方は、制度の違いを正しく把握し、期日までに自身で「確定申告」を行わなければなりません。申告が必要な所得を放置してしまうと、延滞税や無申告加算税といったペナルティが科される恐れがあるため、自身に必要な手続きを正しく見極めることが大切です。
一方で、社内の人事・労務担当者にとっても、「年末調整でできること・できないこと」を従業員へ正しく周知し、期日内の提出や不備チェックを徹底することは、繁忙期の業務負荷を抑えるための重要なポイントとなります。
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