「勤怠管理」とは、企業が従業員の就労状況を把握し、管理することを指します。一口に「勤怠を管理する」といっても、その管理データの活用範囲は多岐にわたります。当記事では、その目的、勤怠管理の方法3つ、それぞれのメリット・デメリットについて、簡潔に解説します。

勤怠管理とは
勤怠管理 | 企業や事業者が従業員の労働状況を正確に記録、把握し、管理すること |
勤怠管理とは、従業員がいつ出勤し、いつ退勤したのか、遅刻や早退、欠勤はあるか、休憩時間、休暇を取っているのかといった勤怠に関する情報を、企業(事業者)が適正に把握し、管理することを指します。
労働基準法では、使用者(事業者)に対し、従業員の労働時間を適切に管理する責務が課されています。
原則として、すべての事業場は全労働者を対象に、「法定の労働時間・休憩・休日」「時間外労働協定(36協定)」「年次有給休暇」などを適正に管理しなければなりません(ただし、農業や水産業など天候等により稼働日が変動する一部事業場を除く)。
<管理する内容>
出勤時間
休憩時間
休日労働時間
代休・振休の日数
退勤時間
時間外労働(残業)時間
出勤日数
有給休暇の取得日数
労働時間
深夜労働時間
欠勤日数
有休残日数
など

勤怠管理を行う目的
勤怠管理を行う目的は、「従業員と企業を保護すること」にあります。
従業員を守るため
勤怠管理は、従業員の健康を守るために必要です。もし会社が従業員の労働時間や休暇・残業の有無を把握していなければ、業務量が人によって異なっていても気付くことができません。
一部の従業員に業務負担が偏ってしまうとどうなるでしょうか。
過度な長時間労働、深夜労働により従業員が心身の健康を害してしまうリスクが発生します。

従業員の自己申告制ではなく、企業側が適切に勤怠管理を行うことで、法定労働時間を超えて過度に働いている実態がないか監視することができます。そして、勤務時間に偏りが見られる場合は、業務量の調整など対策を講じるきっかけとなります。
加重労働により疲労が蓄積し、健康障害発症のリスクが高まった労働者に対しては、労働安全衛生法により、医師による面接指導を実施することが事業者に義務付けられています。
企業を守るため
勤怠を適切に管理することは、従業員を守るだけではなく、企業の保護にもつながります。
従業員の勤怠を正確に把握できていないと、企業は給与の支払いを正しく行うことができません。結果、労使間のトラブルに発展したり、労働基準法に違反してしまうリスクにつながります。

昨今、このようなトラブルが起きた場合、すぐにSNSや口コミサイトに掲載されて拡散されてしまうというケースが多く見受けられます。たった一つのトラブルであっても、企業の社会的信頼は大きく低下してしまいます。
さらに、労使トラブルによって訴訟や賠償問題に発展したり、いわゆる「ブラック企業」と見なされたりすることで離職率の上昇や採用への影響も考えられるでしょう。
現在の経営状態だけでなく、未来の人事戦略にまで悪影響が及ぶことを避けるため、正確な労務管理ができる体制を整えておく必要があります。

勤怠管理の方法とメリット・デメリット
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、以下のように始業・終業時刻の確認及び記録について定められています。
<始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法>
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
(ア)使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
(イ)タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
一般的な勤怠管理の方法3つ
勤怠管理にはさまざまな方法があります。ここでは代表的な3つの方法を紹介します。
それぞれのメリット・デメリットを理解することで、自社に最適な勤怠管理の方法を選ぶ参考になります。
タイムカード
タイムカードは、従業員が出勤・退勤の時刻をカードに打刻する方式です。導入に必要なのはタイムレコーダー、タイムカード、インク代・電気代程度で、設定も簡単なため、導入後すぐに運用を開始できます。
【メリット】
・導入コストが低い
・設定が簡単で、すぐに使える
・社員への説明負担が少ない
【デメリット】
・打刻情報を手入力する必要があり、管理に手間と時間がかかる
・集計ミスやデータ改ざんのリスクがある
・リアルタイムで従業員の稼働状況を把握できない

タイムカードは初期費用を抑えられる点が魅力ですが、手作業が多く、労務管理の負担は大きい方法です。法律を遵守しつつ正確な勤怠管理を行うためには、細やかな確認作業が不可欠です。
タイムカードは労働基準法により、”五年間保存しなければならない”とされているため、保管スペースの確保も必要になります。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する必要な書類を五年間保存しなければならない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
Excel(エクセル)
Excelを使った勤怠管理では、関数やマクロを活用して自社の就業規則に合わせたカスタマイズが可能です。会社のパソコンに Microsoft Officeがあれば、初期費用やランニングコストはほとんどかかりません。
【メリット】
・初期費用・ランニングコストがほとんどかからない
・自社の就業規則に合わせた柔軟なカスタマイズが可能
【デメリット】
・データ入力に手間がかかり、ミスの可能性が高い
・法改正があった場合、関数やマクロを修正する必要がある
・Excelデータを給与計算システムに反映させる際、制約が出る場合がある

コストを抑えつつ柔軟性がある方法ですが、担当者の負担や法改正対応の手間が大きく、従業員数が多い場合は管理が煩雑になりやすい方法です。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、クラウドやオンプレミスの専用ソフトを使い、従業員の勤怠状況を自動で記録・管理する方法です。入力や申請もシステム上で行えるため、管理負担を大幅に軽減できます。また、法改正にも多くの場合で自動対応されるため、法律違反リスクを低減できます。
【メリット】
・勤怠管理の負担を大幅に軽減できる
・従業員情報の入力や申請がスムーズ
・法改正にも自動で対応、法律違反リスクを低減
・勤怠状況をリアルタイムで把握でき、長時間労働防止に役立つ
【デメリット】
・導入・運用に月々のコストがかかる
・費用対効果を踏まえた検討が必要

勤怠管理システムの種類
勤怠管理システムには、オンプレミスタイプとクラウドタイプがあります。
●オンプレミスタイプ
いわゆる「オンプレ」と呼ばれるタイプです。
自社の設備内にサーバーやソフトウェアを設置して運用するタイプです。初期費用はかかりますが、強固なセキュリティや自由なカスタマイズ性が強みで、従業員数が1,000名を超すような大規模企業に向いています。
●クラウドタイプ
インターネット経由でアクセスするサービスで、従業員1人当たり数百円から利用できるものもあります。初期設定が簡単で、スピーディに運用開始できるほか、給与計算など他システムとの連携も容易です。

勤怠管理パターンごとのメリット・デメリット比較図
タイムカード | Excel | システム | |
コストの高さ | 低 | 低 | 中~高 |
手間の多さ | 多 | 多 | 少 |
ミスの起こりやすさ | 多 | 多 | 少 |
リアルタイムで勤怠確認 | × | × | 〇 |
給与連携 | × | △ | 〇 |
カスタマイズ | × | 〇 | △ |
法改正対応 | × | × | 〇 |
正確な勤怠管理にはシステム導入がおすすめ
勤怠管理はシステム導入が最も効果的です。
これまで、勤怠管理の目的や代表的な方法について解説してきました。タイムカードやExcelでの管理は初期費用が抑えられる点が魅力ですが、安価であることだけが判断基準ではありません。
勤怠管理は一度行えば終わりという業務ではなく、日々継続して実施する必要があります。また、法改正への対応や、その後に続く給与計算業務も考慮すると、勤怠管理システムを導入したほうが長期的な運用コストは低く、効率化にもつながります。
さらに近年では、働き方改革や有給休暇の取得義務化など、ワークライフバランスへの注目が高まっています。従業員の働き方改善や事業拡大の観点からも、勤怠管理の見直しを検討されている企業には、システム導入が有効な選択肢となるでしょう。
BODなら、人事労務システムの取り扱い数が豊富!!
ぜひ一度ご相談ください!
BODでは、BPO業界の中でも人事労務システムの取り扱い数が豊富です。
各システムの特性やメリット・デメリットを熟知したコンサルタントが、お客様に最適なアウトソーシングプランをご提案します。勤怠管理と給与計算の一元管理も可能です!