SaaS型クラウドシステムの導入は一般的になりましたが、「現場で活用されていない」「定着していない」といった課題も多く聞かれます。特に、勤怠や給与などの基幹業務系システムでも、使いこなせず結局は手作業といった悩みも多く、クラウド化の本来の目的である 業務効率化につながっていないケースも見受けられます。また、営業支援や人材管理、社内ツールなどは“形だけの導入”になりがちで、定着しないまま投資効果が出ていないケースも少なくありません。
本記事では、クラウドシステム導入後の「活用・定着」に焦点をあて、現場で使われる仕組みづくりと、それを支援する伴走型サービスの必要性を解説します。

導入が進むクラウドシステム、活用・定着の課題
クラウドシステムの導入は、 DX推進や業務効率化を背景に多くの企業で進んでいます。しかし、現場に目を向けると「機能の一部しか使われていない」「導入しただけで定着していない」といった声もしばしば聞かれます。ここでは、人事・総務領域でよく見られる代表的な課題を整理します。
給与・勤怠系システム:使わざるを得ないケース
給与計算や勤怠管理などのクラウドシステムは、日常業務に直結するため、“使わざるを得ない”存在です。とはいえ、「操作が分かりづらい」「機能の一部しか使えていない」「自社ルールに沿った設定が難しく、結局Excelで処理している」といった悩みは多く、業務改善につながっていない例も目立ちます。クラウドサービスの特性を活用できていないケースが見られ、「クラウドシステムを導入したのに、むしろ手間が増えた」と感じている担当者も珍しくはありません。

営業・人事・社内ツール:“形だけの導入”が増加
近年、SFA(営業支援ツール)や人材管理システム、社内チャットや掲示板ツールなど、多様なSaaSが部門ごとに導入されています。
しかし、「初期設定だけで実際には使われていない」「説明会以降フォローがない」といった状態では、せっかくのクラウドツールも“形だけの導入”になりがちです。「定着しない」「社内で活用されない」という課題の背景には、導入時の設計・教育不足があるケースも多く見受けられます。

問い合わせ対応が情シスに集中する構造的課題
クラウドシステム導入後によくあるのが、「どこに聞けばいいのか分からない」「ちょっとした操作が不安」といった問い合わせが、すべて情報システム部門に集まってしまう状況です。運用体制の整備が不十分な場合、こうした問い合わせの集中は避けられません。
本来、IT部門は戦略的なDXを推進すべきですが、実態は“社内ヘルプデスク化”してしまい、現場も「誰にも相談できない」「システムが使いづらい」と不満を抱きがちです。
クラウドシステムを導入しても、定着しなければ意味がない。その構造的な課題が浮き彫りになっています。

なぜ導入したシステムが定着しづらいのか?
初期教育や定着施策が不十分なまま本番運用へ
クラウドシステムの多くは、導入決定から短期間で本番運用に移行します。ここで、現場で使う人の準備が不十分なままスタートすると、定着の障壁となってしまいます。
たとえば…
- 社員への初期レクチャーは1回のみ
- マニュアルは共有されたが、活用されていない
- トラブルやつまずきの情報が社内共有されていない
具体的な導入ステップや手順の共有が不足していると、定着は難しくなります。結果として「自己流で使う」「よくわからず放置」という状態が続き、せっかくのクラウドシステムが社内に馴染まないままになるのです。
ベンダー任せではカバーできない「社内ならでは」の壁
もちろんSaaSベンダーもFAQやマニュアル、カスタマーサポートなどを通じて、システムの使い方支援を行っています。しかし、それにも限界があります。
クラウド事業者が提供する支援では、自社業務に最適化されたカスタマイズまではカバーしきれないのが現状です。その会社ならではの使い方や実際の業務フローにまで踏み込むことは難しいため、実際の業務では、“自社特有の壁”が立ちはだかってしまうのです。
- 特殊なルールをどうシステムに反映するか不明
- 社内からの問い合わせに対して「聞いても無理だろう」という諦め
こうした課題は、ベンダーだけでは解消できず、「社内視点での支援体制」が求められています。
~ オンプレミス型システムからSaaSへの乗り換えに関する実態調査 ~
jinjer株式会社の調査によると、SaaS移行により不満に感じている点として「カスタマイズ性に制限があり、できないことが多い(36.5%)」「他の既存システムとの連携・統合が複雑(26.9%)」、「運用にあたり必要機能が不足している(17.3%)」という結果が出ています。

出典:jinjer株式会社 URL:https://jinjer.co.jp/
オンプレミス型システムからSaaSへの乗り換えに関する実態調査
BOD「クラウドシステム導入支援サービス」 ~ お客様の声 ~
「勤怠と給与形態が複雑でシステムの利用は無理そう…、
BODの設定代行のおかげで運用できる状態になり、大変助かっています!」
「定着支援」という選択肢が注目されている理由
現場で使われる仕組みを“伴走型”で整える
クラウドシステム導入後、「操作説明をしたら終わり」では、現場での活用にはつながりません。IaaSやPaaS型のクラウドではなく、SaaSであっても保守や運用管理の支援体制が求められています。
そこで近年注目されているのが、「定着支援」に特化した伴走型サービスです。単なるマニュアル提供や操作レクチャーにとどまらず、運用フェーズに踏み込んだ対応が行われます。
【具体的なサービス事例】
- 現場の利用実態を踏まえた運用設計
- 社内向けFAQや簡易マニュアルの整備
- 初期の問い合わせ対応や操作ナビゲーション
- 部門ごとの活用提案や運用アドバイス

導入後の数カ月間、あるいは運用が安定するまで、社内ITチームのように寄り添う支援体制が、システムの活用・定着を大きく後押しします。
SaaS導入後の成果を最大化する仕掛け
クラウドシステムを導入しても、現場で使われなければ意味がありません。逆に、活用が定着すれば、次のような成果が自然と見えてきます。
- 利用率の向上により、投資対効果(ROI)が明確になる
- 問い合わせが減り、情シスや管理部門の負荷が軽減される
- 各部門に“活用ナレッジ”が蓄積され、社内に展開される
- 部門間で連携しながらシステムを使いこなす文化が育つ
セキュリティ対策やリスク管理がますます重視される中、クラウドの活用を継続し、インフラとしてのクラウド環境を社内に定着させることで、より柔軟な働き方の実現にもつながります。
SaaSやクラウドツールは「導入して終わり」ではなく、使い続けてこそ価値を発揮するもの。その意味でも、“使われること”にこだわる支援体制が、クラウド導入成功のカギとなるのです。

「導入=ゴール」にしないために必要な視点
ツールではなく“使い方の仕組み”を導入する意識
クラウドシステムを導入する際、つい「ツールを入れること」がゴールになりがちです。しかし、本当に必要なのは「どう使うか」をあらかじめ設計することです。
- 誰が、どの業務で、どのように使うのか
- 入力・確認のルールが統一されているか
- 不明点が出たときの対応フローが決まっているか
- 活用状況をどうモニタリング・改善していくか

このように、“使い方までを設計する視点”があるかどうかで、クラウドシステムの定着度は大きく変わります。「システムを入れる」のではなく、「運用の仕組みを入れる」意識が重要です。
また、この設計によって、クラウド導入のメリットを最大限に引き出すことができ、単なるツール導入にとどまらない効果が得られます。既存システムや業務との整合性を意識したリソース配分も、定着を左右する重要なポイントです。
社内の使い方・定着率を見直す3つのチェックポイント
すでにクラウドシステムを導入済みの企業でも、以下のような視点で一度活用状況を棚卸してみることをおすすめします。
【3つのチェックポイント】
- 活用が進んでいる部署と、取り残されている部署に差がないか
- 操作やルールが属人的になっていないか
- 社員の不満や混乱が放置されていないか
こうした観点から活用状況を見直し、「定着支援が必要かどうか」を検討することが次の一手につながります。
定着支援を含めた運用設計がDX推進を後押し
クラウドシステムの導入は、あくまでもDXのスタート地点です。
本当の価値は「業務の効率化」や「情報共有」「属人化の解消」など、社内の仕組みづくりに活かされてこそ発揮されます。そのためには、「導入したら終わり」ではなく、“どう社内に根付かせるか”を支援する体制が必要です。
多くの企業が陥る「導入はしたが、定着しない」状態を防ぐには、ベンダーには難しい社内支援を担う伴走型の支援サービスを活用することが有効な手段となります。
クラウドシステム導入の真のゴールは「現場で活用され、成果が出ること」。その実現に向けて、自社に合った定着支援を考えてみてはいかがでしょうか。
クラウドシステムの導入・定着にお悩みの方へ
BODでは、現場に寄り添う伴走型の「クラウドシステム導入支援サービス」を提供しています。
導入フェーズから運用・定着までを一貫してサポートし、「使われる仕組み」をつくります!