2026年 労働基準法改正|主要ポイントと企業が取るべき実務対応 ノウハウ

2026年 労働基準法改正|主要ポイントと企業が取るべき実務対応

勤務間インターバル・連続勤務規制など、企業への影響をわかりやすく解説

2026年、労働基準法が約40年ぶりに大きく改正される見通しです。勤務間インターバル制度の義務化や連続勤務の上限規制など、企業の労務管理に直接影響する改正が盛り込まれる可能性があり、早めの対応が求められます。法改正の背景には、少子高齢化による労働力構造の変化や、テレワーク・副業といった働き方の多様化、国際的な労働基準との整合性といった課題があります。

この記事では、2026年の労働基準法改正の動向と主要ポイント、企業への影響、そして今から検討しておきたい実務対応を、わかりやすく整理します。

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なぜ今、労働基準法の大改正が必要なのか?

労働基準法は1947年の制定以降、時代の変化に応じて部分的な改正が重ねられてきましたが、その基本構造は長らく大きく変わっていません。
一方で近年は、働き方や労働環境が法制度の想定を大きく超えて多様化しており、現行の枠組みでは対応しきれない課題が顕在化しています。

なぜ今、労働基準法の大改正が必要なのか?

たとえば、以下のような課題が指摘されています。
・長時間労働が一部業種・職種で常態化し、健康被害や離職につながっている
・テレワークや副業など、従来の「1社専属・定時勤務」モデルに合わない働き方が増加している
・労働者の権利意識が高まり、企業には情報開示の必要性がより強く求められている
・国際的な労働基準(例:EUの「つながらない権利
(※)」)とのギャップが生じている

こうした背景のもと、労働時間・休日・休息の考え方を現代の実態に合わせて見直す必要性が高まり、2026年を見据えた労働基準法の包括的な改正が検討されています。

また、近年の労働関連法改正(2019年の働き方改革関連法、2023年の割増賃金率引き上げなど)を経て、企業の労務管理に対する社会的な期待も高まっています。2026年の労働基準法改正は、こうした流れの延長線上にあるものと位置づけることができるでしょう。

※「つながらない権利」とは
勤務時間外や休日に業務上の連絡に応答しない自由を保障する権利。テレワークやスマートフォンの普及により、仕事と私生活の境界があいまいになっている現状への対応として注目されています。

2026年 労働基準法改正の主なポイント

今回の労働基準法改正では、労働時間・休日・休息の考え方を見直す制度変更が中心になると見込まれています。中でも企業実務への影響が大きいと考えられる主なポイントは以下の通りです。

勤務間インターバル制度の義務化

終業から次の始業までに一定の休息時間(例:11時間)を確保する勤務間インターバル制度が義務化される見込みです。たとえば、夜22時に退勤した場合、翌日の始業は原則として午前9時以降とする必要が生じる可能性があります。

【実務影響】
・夜勤明けや遅番後の翌日勤務が制限される
・シフト設計の見直しが必要
・勤怠システムでのインターバル管理が求められる

連続勤務の上限規制

過重労働を防ぐ観点から、連続勤務日数に13日という上限が設けられる方向です。これにより、週1回の法定休日の確保がより厳格に求められます。 

【実務影響】
・休日の明示と取得状況の管理が必須 
・代休・振替休日の運用ルール整備が必要 

連続勤務の上限規制

法定休日の明確化

企業は週1回以上の法定休日をあらかじめ特定し、明示することが求められる方向です。就業規則や雇用契約書への記載の明確化がポイントになります。

【実務影響】
・就業規則の休日規定の見直し
・年間休日カレンダーの整備・共有

有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化

年次有給休暇取得時の賃金について、「通常賃金方式」を原則とする方向で整理が進められています。これは、通常の労働日に支払われる賃金と同額を、有給休暇取得日にも支払う方式です。

【実務影響】
・給与規程や就業規則の記載内容の確認
・給与計算システムの設定見直し

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「つながらない権利」の導入 

勤務時間外や休日に業務連絡へ応答しない自由、いわゆるつながらない権利(Right to Disconnect)」が、ガイドラインとして策定される予定です。

【実務影響】
・メール・チャットの送信ルール整備
・管理職向けの意識改革や研修の実施

つながらない権利

副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し 

複数の事業主で働く場合の労働時間の通算方法が見直され、割増賃金の算定基準が変わる可能性があります。

【実務影響】
・副業申請・申告制度の整備
・勤怠管理における通算対応の検討

「週44時間労働」の特例措置の廃止

一部業種の中小企業に認められている「週44時間労働」の特例措置について、見直しや段階的な廃止が検討される見込みです。あわせて、裁量労働制の運用・適用範囲の再確認も求められる可能性があります。

【実務影響】
・特例対象企業は週40時間制への移行が必要
・裁量労働制の適用職種・要件の再確認

~ 補足 ~
◆情報開示の強化
時間外労働や休日労働の実績、制度の運用状況について、労働者や求職者に対する情報開示が強化される方向です。採用ページや求人票への情報掲載、また、労働時間実績の社内共有と記録保存が重要になります。

◆ 育児・介護と仕事の両立支援の強化
育児・介護と仕事を両立しやすい環境整備として、フレックスタイム制やテレワーク活用などの支援策が引き続き進められます

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改正が企業に与える影響【5つの視点】

2026年の労働基準法改正は、単に一部の制度を変更するものではなく、企業の労務管理全体に連鎖的な影響を及ぼすと考えられます。
人件費やシステム対応といったコスト面に加え、規程整備や従業員への説明など、継続的な運用負荷が発生する点も見逃せません。主な影響を、実務の観点から5つの視点で整理します。

(1)人件費の増加
  ・シフト調整や人員増によるコスト増
  ・割増賃金の支払い対象拡大

(2)勤怠・給与管理の複雑化
  ・勤務間インターバルや副業通算への対応
  ・勤怠システムの改修・再構築

(3)就業規則・雇用契約の見直し
  ・改正内容を反映した規程整備
  ・労使協定の再締結が必要な場合も

(4)従業員教育・説明責任の強化
  ・誤解や混乱を防ぐための社内研修
  ・管理職のマネジメント力向上が不可欠

(5)採用・定着への影響
  ・法令順守企業としてのブランディング強化
  ・働きやすさを訴求する採用戦略の再構築 

改正が企業に与える影響【5つの視点】人件費の増加

中小企業が特に注意すべきポイント【要点整理】 

2026年の労働基準法改正では、制度そのものよりも、「どう運用するか」が企業対応の成否を分けます。特に中小企業では、対応を誤りやすい“つまずきポイント”を事前に把握しておくことが重要です。

中小企業が特に注意すべきポイントは、次の5点です。

中小企業が特に注意すべきポイント【要点整理】

(1)制度対応が「場当たり的」になりやすい
日常業務に追われる中で部分的な対応を重ねていくと、全体像が見えにくくなり、結果的に労働時間や休日管理が複雑化する恐れがあります。

(2)就業規則と実際の運用にズレが生じやすい
休日の明示や休息ルールを就業規則等の書面に形式的に追加するだけでは、実務とのズレが生じやすくなります。

(3)法改正の“解釈”を誤りやすい
義務化・努力義務・ガイドラインの違いを正しく理解できていないと、判断に迷う場面が出てきやすくなります。

(4)複数拠点・グループ内で対応基準がバラつく
複数の拠点や部門を持つ場合、それぞれの判断に任せていると、対応基準にばらつきが生じる可能性があります。

(5)対応を「担当者任せ」にしがち
特定の担当者に依存すると、業務過多や引き継ぎ不能といったリスクが顕在化します。

次章では、これらのポイントを踏まえ、中小企業が無理なく進めるための実務対応策を具体的に解説します。

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中小企業向け:実務対応の具体策

2026年の労働基準法改正を前に、中小企業では制度の理解よりも、実務として回るかどうかが大きな課題になります。特に「人手」「予算」「専門知識」の面で対応が難しい場面が多くなると予想されます。 
ここでは、すべてを一度に完璧に整えようとしなくても進められるよう、日々の労務管理に直結する観点から、実務対応の具体策を整理します。 

残業・労働時間管理を前提から見直す

勤務間インターバルや連続勤務の制限が強化されることで、これまで以上に労働時間の組み方そのものが問われます。 

【対応策】 
・月60時間超の残業が発生している部署・職種を洗い出す 
・業務量の偏りがないかを確認し、平準化を検討する 
・業務プロセスの見直しやRPA等による効率化を検討する 
・勤怠管理システムで、残業時間に対するアラート設定を行う 
・管理職向けに、残業抑制を意識したマネジメント研修を行う 

▼RPAについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

就業規則を「書類」ではなく「運用目線」で整備 

就業規則が「ひな形のまま」になっていたり、実態と乖離していたりするケースが少なくありません。2026年改正では、就業規則に明記すべき項目が増えるため、放置しておくと労基署からの是正指導や従業員とのトラブルにつながる可能性があります。

【対応策】 
・現行の就業規則を棚卸しし、実際の運用内容を照らし合わせる
・改正内容を反映した「中小企業向け簡易モデル規則(※)」を活用する
・改正内容を踏まえ、必要最低限かつ実務に即した規則に再設計する
・就業規則の改訂後は、従業員説明会を実施し、周知・同意を得る

※ 厚生労働省:モデル就業規則について

外部専門家(社労士・弁護士)との連携強化

中小企業では、法改正の情報収集や制度設計をすべて内製で行うのは現実的に困難です。特に、労働時間制度や割増賃金の計算、就業規則の法的整合性などは、専門知識が求められる領域です。 

【対応策】 
・顧問社労士との定期的な打ち合わせを設定する(月1回など)
・就業規則改訂などはスポット型サービスを活用する
・労務トラブルが想定される場合は、弁護士と連携して早期解決を図る
・商工会議所や業界団体が主催する無料セミナー・相談会に参加する

グループ会社・関連会社とのルール統一

複数の法人や事業所を持つ中小企業グループでは、拠点ごとに対応が分かれると、管理負担やリスクが高まります。全社的な統一ルールが求められる場面が増えることが予想されるため、グループ内での整合性が重要です。

【対応策】 
・グループ全体で「労務管理方針」を策定し、共通ルールを明文化する
・就業規則や勤怠ルールを統一し、例外は明確に定義する
・グループ横断の労務担当者会議を定期開催し、情報共有を図る
・勤怠・給与システムも可能な限り統一し、管理の一元化を進める

自社対応の限界を見極め、BPOやクラウド活用も視野に

中小企業では、労務担当者が1人または兼任であることが多く、法改正対応に十分な時間やリソースを割けないのが実情です。すべてを自社で抱え込むのではなく、外部の力を借りることも重要な選択肢です。

【対応策】 
・勤怠管理・給与計算のBPO(外部委託)を検討する
・クラウド型の労務管理システム(例:SmartHR、freee人事労務など)を導入する
・就業規則の作成・改訂をパッケージ化した社労士サービスを活用する
・改正対応の進捗を「見える化」するためチェックリスト等で管理する

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無理のない改正対応を実現するために

2026年の労働基準法改正は、中小企業にとって負担が大きいテーマである一方、働き方や労務管理のあり方を見直す機会でもあります。 

ただし、ここで注意したいのは、「正しく対応しよう」と真面目に取り組むほど、すべてを自社だけで抱え込んでしまいやすい点です 。 
実務の現場では、次のような“つまずき”が起こりやすくなります。 

無理のない改正対応を実現するために

中小企業が陥りやすい3つの落とし穴

1「うちは小さい会社だから関係ない」と思い込む
労働基準法は企業規模にかかわらず適用されます。特例措置の見直しも進んでおり、早めの対応が重要です。

2「とりあえず就業規則を直せばいい」と考えてしまう
就業規則の改訂は出発点にすぎません。運用、周知、教育まで含めて初めて実効性が生まれます。

3「全部自社でやろう」として疲弊する
限られた人手で無理に対応を進めると、かえって法令違反や従業員トラブルのリスクが高まります。

こうした状況を避けるためには、「何を自社で行い、何を外部に任せるか」を冷静に整理することが欠かせません。

たとえば、
・制度の判断や規程整備は社労士に相談する
・勤怠管理や給与計算はクラウドシステムやBPOを活用する
・社内では運用とコミュニケーションに注力する

このような役割分担を行うことで、無理なく、かつ確実に法改正対応を進めることが可能になります。
クラウド上のソフトウェアと、業務をアウトソーシングできるBPOを組み合わせた「BPaaS」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

法改正対応は、単なる「コスト視点」ではありません。
適切に対応できている企業であること自体が、従業員や求職者からの信頼につながる時代です。

限られたリソースの中で最大限の効果を出すためにも、外部の専門家や仕組みを上手に活用しながら、自社に合った形で法改正対応を進めていきましょう。

勤怠管理の負担を減らし、法改正対応を無理なく進めたい方へ

※本記事の内容は、2025年11月時点で公表されている厚生労働省「労働基準関係法制研究会」等の資料をもとにしています。今後の議論により、具体的な制度内容や施行時期が変更される可能性があります。
参考資料: https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001370269.pdf

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