中途入社者の給与計算は、企業の人事・経理担当者にとって非常に重要な業務のひとつです。月給制であっても、入社日が月の途中であれば、給与は日割りで支給するのが一般的です。しかし、日割り計算の方法や対象項目、社会保険料の扱いなど、実務上の注意点は多岐にわたります。
本記事では、中途入社者の給与計算における基本的な考え方から、代表的な日割り計算方法、実務上の注意点、トラブル回避のポイントまでを網羅的に解説します。人事・経理担当者や中小企業の経営者の方にとって、実務にすぐ活かせる内容となっています。
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中途入社の場合、給与は日割りが基本形
月給制であっても、入社日が月の途中である場合、実際に勤務した日数に応じて給与を支払うのが一般的です。ただし、給与の日割り計算については、労働基準法などの法令で明確な定めがあるわけではありません。労働基準法第24条では「賃金は労働の対価として支払うこと」が定められていますが、どのように日割り計算を行うかについての明文化はされていません。
そのため、企業ごとに就業規則や賃金規程で計算方法を定めておくことが重要です。計算方法が曖昧なままだと、従業員との間で認識のズレが生じ、労使トラブルに発展する可能性があります。万が一、就業規則に明記されていない場合は、上長や人事労務部門の責任者と相談し、どのような基準で日割り計算を行うのかを明確にしておく必要があります。
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日割り給与の計算方法とは
給与を日割りで計算する方法には、3パターンあります。前述の通り、労働基準法では日割り計算についての定めはないため、企業はそれぞれの判断で計算方法を決めることができます。
この項では、それぞれのパターンの具体的な計算方法とメリットについてご説明します。

暦日を基準とする方法
社員が入社した月の暦日(カレンダー上の日数)を基準として計算する方法です。30日と31日の月があること、2月はうるう年の場合があることに注意しましょう。
基本給 ÷ 当該月の暦日 × 出勤日数 = 日割り給与支給額
※基本給20万円の社員/ 4月に10日間出勤した場合※
20万円 ÷ 30日(4月の暦日) × 10日 = 66,667円
暦日を基準として計算する場合、31日の月がある一方、2月は28日(29日)であるため、入社月によって公平ではなくなります。ただし計算が簡単なため、ミスが起きにくいことがメリットです。
当該月の所定労働日数を用いる方法
社員が入社した月の所定労働日数(会社カレンダーの定めによる日数)を基準として計算する方法です。
基本給 ÷ 当該月の所定労働日数 × 出勤日数 = 日割り給与支給額
※基本給20万円の社員/ 所定労働日数21日の月に10日間出勤した場合※
20万円 ÷ 21日(所定労働日数) × 10日 = 95,238円
暦日基準での計算方法と比べて、こちらの方が支給額が高くなるのは、休日の日数を含んでいないためです。これは給与を受け取る側にとってメリットのある方法と言えます。ただし所定労働日数は、祝日や年末年始休暇等の関係で月ごとに日数が変化するため、何月に入社するかによって支給額は変動します。
月平均の所定労働日数を用いる方法
社員が入社した月に関係なく、月平均の所定労働日数を使う方法です。これには、まず月平均の所定労働日数を求める計算が必要になります。
【月平均の所定労働日数の求め方】
年間所定労働日数(会社カレンダーの定めによる)÷12カ月=月平均の所定労働日数
年間所定労働日数が245日の場合、245日÷12カ月= 20.4日が月平均の所定労働日数になります。
基本給 ÷ 月平均の所定労働日数 × 出勤日数 = 日割り給与支給額
※基本給20万円の社員/ 月平均の所定労働日数20.4日/ 10日間出勤した場合※
20万円 ÷ 20.4日(月平均の所定労働日数) × 10日 = 98,040円
この方法の場合、月ごとのばらつきがないため公平な日割り計算が可能です。つまり、何月に入社した社員でも平等に給与計算できることがメリットと言えます。
ただし、月平均の所定労働日数を求める場合、小数点がついて計算がややこしくなりミスをする可能性もあります。日割り計算をする際の法的な基準はないため、「何月に途中入社しても、日割り計算する際に月の日数は30日で」、「25日で」などと、企業独自の計算方法を決めることもできます。そうすると計算はシンプルで間違いにくくなりますし、どの社員に対しても公平性を保つことができます。
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日割り計算の対象となる給与項目と対象外項目
各種手当に関する注意点:手当の性質と日割り対象の考え方
中途入社者の給与を日割り計算する際には、基本給だけでなく、各種手当をどこまで日割りの対象とするかを明確にしておくことが重要です。特に、手当の取り扱いについては法的なルールが存在しないため、企業ごとに就業規則や賃金規程で定めておく必要があります。
日割りの対象とするかどうかは、手当の性質によって判断するのが一般的です。以下のように、手当を「職務に関する手当」と「生活に関する手当」に分類し、それぞれの性質に応じて取り扱いを決める方法が実務上よく用いられています。
■ 職務に関する手当:原則的に日割りの対象
・職務手当
・能力手当
・役職手当
・営業手当 など

これらは、実際に職務を提供したことに対して支払われる性質のため、勤務日数に応じて日割り計算するのが合理的です。たとえば、役職に就いた日から支給が始まる役職手当などは、入社日や発令日を基準に日割りするのが一般的です。
■ 生活に関する手当:満額支給も可
・家族手当
・子女教育手当
・住宅手当
・通勤手当(定期代など) など

これらは、従業員の生活を支援する福利厚生的な意味合いが強く、職務の提供とは直接関係しないため、途中入社であっても満額支給とする企業も少なくありません。特に住宅手当や家族手当などは、日割りにする合理的な根拠が乏しいため、満額支給が良心的で、従業員満足度の向上にもつながります。
※通勤手当について
定期代を支給する場合は実際の通勤開始日からの日数分を日割りするケースもあります。また、コロナ禍以降テレワーク導入が進んでおり、出社日数に応じた交通費を支給する企業も増えているようです。交通費の実費精算方式を採用している場合は、実際の出勤日数に応じた支給が基本です。
日割りの対象外となる項目
以下の法定控除項目は、給与の支給日や資格取得日などに基づいて計算されるため、日割り計算の対象とはなりません。特に社会保険料は、月単位での発生となるため、たとえ1日だけの勤務であっても、月末時点で在籍していれば1ヶ月分が控除される点に注意が必要です。
・社会保険料(健康保険・厚生年金)
※ただし、雇用保険料や所得税は給与の日割り計算に連動

【実務上のポイント】
どの手当を日割り対象とするかは、就業規則や賃金規程に明記しておくことが重要です。明文化されていない場合は、従業員とのトラブルを避けるためにも、入社時に説明責任を果たすことが求められます。
福利厚生的な手当については、満額支給とすることで、入社初期の印象や定着率にも良い影響を与える可能性があります。このように、手当の性質を踏まえたうえで、合理的かつ一貫性のあるルールを設けることが、給与計算の透明性と信頼性を高めるカギとなるでしょう。
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中途入社以外に日割り給与の対象となるケース
中途採用者が入社する際のほかにも、給与の日割り計算が必要になるケースは考えられます。
月の途中で退職する場合、産休・育休、介護休暇に入る場合、逆に復職した場合など。また欠勤や遅刻、早退が多い場合にも適用できます。
給与の日割り計算を行うケースは頻繁にあるため、日割り計算に対するルールは就業規則で明確に定めておく必要があります。
就業規則・賃金規程の整備でトラブルを防止
日割り給与の計算方法や対象項目については、法令上の明確な定めがないため、企業ごとにルールを定める必要があります。だからこそ、就業規則や賃金規程において、日割り計算の基準や対象手当の取り扱いを明文化しておくことが、実務上の安定運用に直結します。
特に注意すべきは、給与計算業務の属人化です。担当者の経験や判断に依存していると、担当交代のたびに計算方法が変わったり、従業員への説明が一貫しなかったりと、トラブルの温床になりかねません。就業規則や賃金規程に明記することで、誰が担当しても同じ基準で処理できる体制を整えることができます。
また、ルールを定めるだけでなく、社内への周知徹底も欠かせません。人事・経理部門だけでなく、現場の管理職や入社対応を行う部署にもルールを共有し、従業員への説明責任を果たせるようにしておくことが重要です。
さらに、就業規則の整備は、労使トラブルの予防にもつながります。たとえば、入社初月の給与が想定より少なかった場合でも、事前に日割り計算のルールが説明されていれば、従業員の納得感は大きく変わります。逆に、説明が不十分なまま支給額に差が出ると、不信感や不満が生じやすくなります。
このように、業務の標準化・効率化、従業員との信頼関係構築、そして企業全体のリスクマネジメントとしても、単なる「ルール」ではなく明確な就業規則・賃金規程を整備しましょう。

給与計算をアウトソーシングしてラクに
ここまで見てきたように、中途入社者の給与計算には、日割り計算の方式選定、手当の取り扱い、就業規則との整合性など、さまざまな判断と実務対応が求められます。従業員数が増えるほど、これらの業務は煩雑化し、ミスやトラブルのリスクも高まります。
こうした背景から、給与計算業務をアウトソーシングする企業が増えています。専門の代行サービスを活用することで、以下のようなメリットが得られます。
・法改正や制度変更への対応を任せられる
・担当者の退職や異動による業務の属人化を防げる
・計算ミスや支給漏れなどのリスクを軽減できる
・本来注力すべき人事戦略や採用活動にリソースを集中できる
特に中小企業では、限られた人員で給与計算を内製化することに限界を感じているケースも多く見られます。アウトソーシングを活用することで、業務の正確性と効率性を両立し、従業員にとっても安心できる給与支給体制を構築することが可能です。
「給与計算の負担を減らしたい」「制度変更に追いつけない」「人事担当者の業務がひっ迫している」といった課題を感じている場合は、ぜひ一度、給与計算代行サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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